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絶対に負けそうもない“無風区”を戦う日本代表と森保監督に求められる姿勢

杉山茂樹スポーツライター
(写真:岸本勉/PICSPORT)

 2026年W杯までたっぷり2年半あるというのに、日本代表は半ば完成された状態にある。1トップを任すことができる選手が現れれば、いつでもW杯本大会に臨める状態にある。

 選手はザクザクいる。日本サッカー史上、選手層は最も厚い。一方で来年1月に開催されるアジアカップは、ベンチ入りのメンバーがコロナ禍以前の23人に戻るので、選考は難航しそうである。

 最悪でもベスト4は行けるとされる中、どんなメンバーを選ぶのか。いわゆるベストメンバーを23人選んでしまうのか。それとも実験色の濃いメンバーで臨むか。チーム力の強化という視点に立つと、パリ五輪を目指すU-22で臨む方が相応しいとする声もある。

 11月から始まるW杯アジア2次予選になると、相手のレベルはさらに下がる。現在考えられる欧州組中心のベストメンバーを送り込んでも強化にはならない。ただ試合をこなすだけになりかねない。欧州カップ戦(チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグ)出場者が十数名まで膨らんだ現実を踏まえれば、デメリットの方がはるかに大きい。

 そうした一流選手に対して失礼な気がする。アジア枠は8.5。日本のレベルを考えれば予選落ちの可能性はほぼ皆無である。実力と枠の関係で言えば、日本の置かれた環境は世界で最も緩い。事実上の無風区を日本はこれから戦おうとしているわけだ。

 この現実を無視してはならない。

「ドーハ」や「ジョホールバル」の頃のエンタメ性を100とすれば10にも満たないレベルだ。そう言っては身も蓋もないので、誰とは言わないが、予選は何が起こるかわからないと、いろんな可能性を引っ張り出し、不安を掻き立てようとする。どうしても盛り上げたい人たちは、ベストメンバーで戦うべし的なことを言い出そうとする。

 そこで森保一監督はどう出るか。彼らと一緒になり、それこそ万に一つもない事故を恐れようとするか。スタンドを満員に埋めるため、視聴率を稼ぐために、そして自らを守るために、欧州組中心のベストメンバーを編成するのか。

 だが、そちらに舵を切れば多くの人の信頼を失う。その筆頭は実際にプレーする選手たちだ。欧州カップ戦に出場している中心選手たちはとりわけ敏感になる。

 本番まで2年半あれば、その間に選手は何人か確実に入れ替わる。外れる選手が出るわけだ。それが誰になるか、この時点で予想することは難しいが、欧州カップ戦に出場するような欧州のエリートクラブで活躍している選手はさすがに外せない選手になる。

 だが彼らが、代表戦のたびに日本と欧州を往復すれば、コンディションを崩す選手が、それなりの確率で現れる。その結果、所属チームで出場機会を減らせば、次の代表戦には呼ばれない可能性が出てくる。

 欧州組はそうしたリスクを抱えながら代表戦に出場している。今回の予選をどう戦うか。どんなメンバーでアジアカップに臨むつもりか。彼らは誰よりも切実な問題として捉えているだろう。とすれば、森保監督の姿勢を誰よりも注視することになる。森保監督には納得感のある説明が求められている。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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