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森保監督がカタールW杯で見落とした景色

杉山茂樹スポーツライター
写真:Shigeki SUGIYAMA

「我々を応援してくださる日本人の方々に勝利をお届けすることができて幸せです」。森保監督が勝利監督インタビューで、ほぼ毎回使用するこのフレーズに確かこの欄で2、3年前、異を唱えたことがある。

 対象をわざわざ、我々を応援してくださる人、あるいは日本人に限定しているように聞こえるこの言い回し。カタールW杯の現場でも用いられていた。その時点で応援していない人、あるいは日本人以外は対象外なのか。重箱の隅を突くような異の唱え方に見えるかもしれないが、これぞW杯本大会を戦う一国の代表監督に相応しくない、非サッカー的なモノの見方だと考える。

 カタールから帰国すれば多くの人から「日本は盛り上がりました」と言われた。それがどれほどのものなのか、筆者は期間中現地にいたので想像するしかないが、日本が敗れ去った後、日本時間の深夜から明け方にかけて行われた外国同士の一戦にも、多くの人が目を凝らしたと聞く。

「日本代表」を応援する人はどの競技にもいる。「がんばれニッポン!」は共通のコンセプトだ。しかし、深夜あるいは明け方、多くの人が外国同士の試合に夢中になって目を凝らす競技はどうだろう。ゴルフ、テニスなどの個人競技はともかく、国名で戦う団体戦、たとえばサッカー以外で、モロッコ対クロアチアを夜中の12時から観戦する人は、どれほどいるだろうか。

 日本だけではない。全世界にあてはまる話だ。前回、ロシアW杯をお茶の間観戦した視聴者数は35億人で、今回は4年半前のその数字を凌駕したとされる。日本対クロアチアを観戦した人は、日本人あるいはクロアチア人より、そうでない非当事者が勝るのだ。W杯の1番の特徴はここにある。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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