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カタールW杯展望その2。3バックのシェア率が増した理由とその長所と短所

杉山茂樹スポーツライター
(写真:ロイター/アフロ)

 カタールW杯の見どころ、その2。

 前回の後半部で触れたセルビアは3バックで戦うチームだ。ドゥシャン・タディッチを2トップ下に据えた3-4-1-2。監督のストイコビッチは名古屋グランパスの監督時代を含め4バックを基本にしていたが、昨年、セルビア代表監督に就任すると、けっして攻撃的とは言えない3バックで戦っている。

 こうした4バックから3バックへ移行するケースは近年増している。昨年開催されたユーロ2020でも垣間見ることができた。相手に両サイドを突かれると5バックになりやすい3バックは、世界的なシェア率を伸ばしている。

 選手交代5人制とそれは深い関わりがある。3バックと言いながら5バックになる理由は、ウイングバックに掛かる負担が高いからである。縦幅105mを1人でカバーすれば、どんなに高い持久力の持ち主でも後半30分を過ぎると足は止まる。相手に裏を取られたくないと考え、専守防衛に徹する。サッカーは瞬間、この上なく守備的になる。

 しかし、交代枠が3人から5人に拡大されたいま、状況は変わった。交代枠に余裕が生まれた。疲労で動けなくなった選手を交代させることができる。両ウイングバックは、3-4-1-2あるいは3-4-2-1の前3人とともに、有力な交代候補となった。ペース配分を気にせず上下動を繰り返すことができれば、5バックで守りながら、同時にプレッシングを掛けることが可能となる。

 交代枠3人制の時代には、実現不可能だった命題を、たとえば60分限定なら精神論に頼ることなく合理的にこなすことができる。守備的なスタンスを保ちながら、同時にプレッシングという攻撃性を発揮することができる。攻撃的とは言えないが、5バックになりやすい3バックは、かつてほど守備的ではなくなっているのだ。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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