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53歳のカズと48歳の下平監督。上下関係のコンセプトを考え直す貴重なサンプルだ  

杉山茂樹スポーツライター
(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 週中に行われたルヴァンカップ対サガン鳥栖戦で、横浜FCのカズこと三浦知良(53歳)が、最年長出場記録を更新した。個人的には、出場機会がもっと見込めそうなチームでプレーする可能性を探って欲しいと思うが、それはともかく、この最年長記録の報道は、毎年更新されるサッカー界の風物詩と言っていい。何歳になっても元気そうなカズの姿を確認する機会になっている。しかしこの話は、それだけで終わらせてはもったいない付加価値がある。サッカーとは何か、スポーツとは何かを考えさせられるプラスアルファの要素が含まれている。

 8月7日。欧州ではチャンピオンズリーグが再開された。決勝トーナメント1回戦、マンチェスター・シティ対レアル・マドリー。前者のベンチにはヴィッセル神戸の前監督、フアン・マヌエル・リージョの姿があった。神戸を去るや、グアルディオラ監督の参謀役としてマンCのコーチの座に就いたのである。

 グアルディオラとリージョ。2人が初めてコミュニケーションを交わしたのは1996-97シーズンの開幕戦。グアルディオラがバルセロナの一員としてオビエドと対戦した、その試合後になる。オビエドがバルサ相手に好ゲームを展開した試合だったが、グアルディオラは、よいサッカーをした相手の監督に歩み寄り「あなたはどうしてそんないいサッカーができるのだ」と、問いかけた。その時のオビエド監督がリージョになる。

 当時、グアルディオラが25歳だったのに対しリージョは30歳。スペイン1部リーグ最年少監督として話題になっていた。その4年前、つまり26歳の時、サラマンカの監督に就任。当時3部だったチームを、前シーズン(95-96)1部に昇格させていた。29歳でスペインリーグ1部最年少監督記録を更新していた。

 リージョが監督業を始めたのは15歳。14歳でサッカー選手として上のクラスに昇級することが敵わず、行き場を失っている時に、監督からコーチをやらないかと打診され、指導者の道に入る。翌年その監督が、家庭の事情で監督業を続けられなくなり、15歳になったリージョにその役が回ってきたと言うわけだ。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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