サウジ戦は堂安ではなく伊東。AとBならBの方がいいという森保Jの皮肉

北川航也(右)と富安健洋(左)写真:岸本勉/PICSPORT(本文中も)

 グループリーグの3試合をすべて1点差で切り抜け、首位通過をはたした森保ジャパン。しかしここまでは序章だ。これからが本番。決勝トーナメントの階段をどこまで昇り詰めることができるか。

 合格ラインは決勝戦進出だ。1992年加茂ジャパン、2000年トルシエジャパン、2004年ジーコジャパン、そして2011年のザックジャパンと、日本は過去4度決勝に進出し、4度とも勝利を飾っている。

 及第点はベスト4。2007年のオシムジャパンがこれに当たる。だが、その準々決勝対オーストラリア戦はPK勝ち。そのPKの話をすれば、優勝した2011年のザックジャパンも準決勝の韓国戦はPK戦だった。そうした意味では、前回2015年大会のアギーレジャパンも評価に困る悩ましい結果だった。準々決勝でUAEにPK負け。ただし、サッカーそのものは悪くなかった。成績は運にも影響される。

 本大会出場国が16から24に増えたのは今回から。したがって決勝トーナメントI回戦も同様に今回が初めてになる。ロシアW杯に照らせばベルギー戦。勝てば日本代表史上、最高位となるベスト8が懸かった試合だったが、アジアカップでは負ければ過去7大会で最低の成績になる。

 日本として、ここは落とせない試合。まさに絶対に負けられない戦いだ。選手としても関わった経験がある森保監督には、事の重大性はなおさら分かっているはず。日本の報道が、結果を監督評価の一番の拠り所にする傾向が強いことも輪を掛ける。相手のサウジアラビアはそれなりの強国。森保監督にはプレッシャーが掛かる。そこでどんな采配に出るか。

森保監督
森保監督

 グループリーグ3戦の戦いを通して森保監督はチームを2つに割った。1戦目(トルクメニスタン戦)、2戦目(オマーン戦)をメインに戦ったグループと、3戦目(ウズベキスタン戦)をメインに戦ったグループ。最初の2試合を戦った方が、監督からの信頼が厚い選手たちと考えるのが自然だ。

 まずAチームで2試合を戦い、決勝トーナメント進出を決める。同じ選手たちを3試合連続出場させると、その先が続かないので、そこでひとまず休ませる。3戦目はBチームに任せる。その結果、試合に敗れ、グループリーグを2位で通過することになっても、それは仕方がない、許容範囲だと割り切る。

 しかし3戦目を戦ったBチームは、ウズベキスタンに見事勝利。2-1で逆転勝利を飾った。その結果「AチームとBチームではBチームの方がよかったんじゃない」と言いたくなる皮肉な事態に陥っている。

 サウジ戦。当初の計画ではAで臨むつもりだったろうが、考えを見直した方がいい。

 Aで2試合を戦い、3試合目をBで戦うというパターンに従えば、Bの次なる出番は6戦目。すなわち準決勝になる。グループリーグ最終戦(3戦目)のように敗れてもオーストラリアか、サウジか、対戦相手が代わるだけの試合とはワケが違う。優勝を狙うチームの方法論として、チームを2つに分けて戦うこのやり方には根本的な問題がある。

伊東純也
伊東純也

 修正するならいまこのタイミングだ。A、Bを融合させたほうがいい。繰り返すが、よかったのはBの方だ。グループリーグの3戦はいずれも1点差ながら、対戦した相手のレベルを踏まえれば、強豪ウズベキスタンを2-1で破ったBの戦いぶりの方が断然、光る。サウジ戦を前に、ここで再びAに総取っ替えするのは、せっかく生まれたよい流れを削ぐことに繋がる。あまりにももったいない。

 まずGK。東口順昭が腰痛で出場できる状態にはないということなので、権田修一(A)とシュミット・ダニエル(B)の争いになる。単純によかったのはどちらか。トルクメニスタン戦でミドルシュートを許した権田より、ウズベキスタン戦で相手のミドルシュートを超美技で止めたシュミット・ダニエルを起用した方が、チームに勢いが出るはずだ。

 サイドバックは、前戦のウズベキスタン戦で武藤嘉紀のヘディングシュートをお膳立てした室屋成(B)を残したい。総合力では酒井宏樹の方が上かもしれないが、勢いはこちらの方がある。

 話は右ウイングに飛ぶが、こちらも堂安律(A)ではなく、伊東純也(B)を残したい。ウズベキスタン戦で最も目立ったのは紛れもなく伊東で、堂安は、1戦目でゴールこそ決めたが、プレーはワンパターンで、チームによい影響を与えているようには見えなかった。名前先行の感がある。

 伊東と堂安。どちらが相手にとって嫌な存在かと言えば伊東。中に入ってプレーをしたがる堂安より、縦に引っ張る力を備えた伊東が出場した方が、バランス的にもスッキリして見える。

南野拓実
南野拓実

 ウズベキスタン戦で目立ったのは伊東と室屋による右サイドからの攻撃だ。逆に、乾貴士と佐々木翔で組む左サイドはよくなかった。こちらはAの長友佑都とウズベキスタン戦でも終盤に交代出場をはたしている原口元気を起用した方がいい。

 センターバックもBの1人を残すべきだろう。槙野智章か三浦弦太か。槙野は第1戦に先発を飾っているので、三浦弦太にチームの総合力を高めるためにも、出場機会を与えるべきだろう。もう1人は吉田麻也か富安健洋かになるが、ここは判断が分かれる。悩ましい問題だ。キャプテンという立場を重視すれば吉田になるが、決勝までの道のりが長いことや、若干20歳の若手に経験を積ませた方が、もっと長い目で見た場合でも得策になる。裏を返せば、キャプテンに絶対的な信頼感を抱けないことでもある。それは吉田と同じく、30歳を超えたベテラン槙野についても言えることだが、CBは選手を新たに育てなければならないポジションでもあるのだ。

 守備的MFはウズベキスタン戦で決勝ゴールをマークしたBの塩谷司を残したい。その方がチームに勢いが出る。となると相方は、遠藤航より、柴崎岳の方が相応しいが、柴崎の調子は正直に言ってイマイチだ。Aチームの調子が上がらない原因とみる。だが、柴崎に代わる選手はチーム内に見当たらない。となると4-2-3-1ではなく、守備的MFが1人の4-3-3にした方が布陣的にはスッキリするが、少なくともAの象徴である柴崎、遠藤のコンビは一時的に崩すべきだろう。

 堂安とともに森保ジャパンの顔役となっている南野拓実にも、名前先行の印象を受ける。日本代表のエースと呼ぶには時期尚早だ。堂安にも言えることだが、出場させるなら交代出場の方がいい。先発より、交代出場の方が次に繋がる。攻撃に変化が期待できる。

武藤嘉紀
武藤嘉紀

 となるとFWは2トップ。ウズベキスタン戦同様、北川航也と武藤嘉紀を並べる。大迫勇也が故障で出場の見込みが立たない現実を踏まえると、この2人の活躍なしに、残り4試合を戦い抜くことはできない。ウズベキスタン戦で武藤はヘディングシュートを決めたが、北川は相手GKの好セーブに遭い、ゴールを取り損ねている。サウジ戦でこのBチームを代表する両者が、点を奪い勝利を収めるようなことになれば、チームは一気に上向くだろう。

 サウジ戦は決勝までの全7試合の道のりの、ちょうど中間に位置する。エンジンをかけ直すタイミングだ。幸いにも、7戦中3戦目に当たるウズベキスタン戦で流れはよくなっている。森保監督は、その流れを活かしながら、さらに加速させることができるか。あるいは失速させてしまうのか。サウジ戦。期待したいのは、残り3戦の戦いを見通すことができる勝利だ。その場限りの勝利では喜べない。AとBをいい感じで融合させることができるか。森保監督が、絶対に負けられない戦いの呪縛にはまると危ない。

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、2018年ロシア大会で連続10回現地取材となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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