兼任監督は限界か。森保監督が技術委員長に見えてしまった一件とは

写真:岸本勉/PICSPORT

 話が簡単に覆りすぎだと思う。

 2020年東京五輪を目指すU-21に、A代表の森保一監督が兼任すると発表されたのは7月26日。それから3ヶ月半ほどしか経っていない。U-21の活動は森保監督就任以降、アジア大会(8月~9月・インドネシア)に続き、現在行われているドバイ杯(11月11日~21日)が2度目になるが、日程がA代表戦(ベネズエラ戦=大分、キルギス戦=豊田)と重なるため、森保ジャパンの横内昭展コーチが、監督代行としてそこで采配を振っている。

 これは、森保兼任監督の仕事内容に無理が生じていることを意味する。東京五輪を目指すチームとA代表の活動の日程が重なるのは、今回限りとは思えない。とすれば、横内コーチの監督代行も、今回限りではなさそうである。基本線は早くも崩れそうな雲行きだが、この兼任の難しさは当初から指摘されていたことでもある。

 横内コーチは、森保監督がサンフレッチェ広島で監督を務めていた時のコーチ。付き合いは長い。

「長く仕事をしてきて、彼とは意思疎通ができている。同じ絵が描けている。横内コーチの指揮は私とすべて同じ。彼が言っていることは、私の言っていることとすべて同じだと自信を持って言える」

 森保監督は記者会見でそう力説した。しかし、本来この台詞を口にすべきは当事者の森保監督ではない。そうでなかった時、責任を取ることができる人物でなければならない。該当するのは関塚隆技術委員長か、田嶋幸三会長かのいずれかになる。うまく行かなかった時、責任の取れない森保監督に記者会見で強引な台詞を吐かせてしまった協会は、組織として問題ありと言わざるを得ない。これでは、森保監督が技術委員長に見えてしまう。

 横内監督代行について「私とすべて同じ」と述べた森保監督にもひとこと言いたくなる。就任以来、自分の志向するサッカーについてほとんど口にしていないのに私とすべて同じと言われても、何のことかさっぱり伝わらない。その口から辛うじて出たのは「臨機応変な対応」だ。自らの志向をここまで語らない代表監督も珍しい。Jクラブの監督はそれで済むかもしれないが、その国のサッカーの方向性に大きな影響を与える代表監督は、もっと丁寧に、分かりやすく語る必要がある。

 代表監督の哲学が鮮明にならなければ、横内監督代行のサッカーが分かるはずがない。「すべて同じ」と言われても、理解できる人はいないだろう。

 そもそも、11月7日に行われたA代表とU-21のメンバー発表記者会見に、横内監督代行はなぜ登壇しなかったのか。代行であるにせよ、監督は監督だ。代表チームではコーチをも務める。自身のサッカーについて、自らの口で語る必要がある。

 森保監督が広島時代に実践していたのは守備的サッカーで、布陣は3-4-2-1だった。あるJリーグの試合後の会見だったと記憶するが、「これからは3バックの時代が来ると思いますよ」と述べ、自らのサッカーを正当化しようとした。

 だがその「3バック」は、アジア大会に臨んだU-21には適用したものの、A代表では採用されていない。4-4-1-1的な4-4-2という広島時代のサッカーからは想像できない攻撃的なスタイルで戦っている。今後はどうするつもりなのか。臨機応変な対応というならば、相手によって使い分けると解釈するのが自然だが。

 横内監督代行はどうするのか。同様に臨機応変な対応で臨むつもりなのか。しかし、森保監督と同じ価値観を共有しているといっても、臨機応変な対応とは人によって異なるもの。それこそが臨機応変な対応の本質である。

 先述の通り、U-21は前回のアジア大会を守備的なサッカー=3-4-2-1で戦っている。4-4-1-1的4-4-2で戦うA代表とはベースが違う。

 そもそも1人の監督が、コンセプトが180度異なるスタイルを、臨機応変な対応と言いながら使い分けようとすることに無理がある。

 相手によって戦い方を変える監督として知られるのはジョゼ・モウリーニョ(現マンチェスターユナイテッド監督)だが、このやり方はその都度、結果が出なければ信用を失う。臨機応変な対応が得意だと胸を張るのならお手並み拝見となるが、単に臨機応変に対応したいとか、臨機応変な対応が好きだという程度の話では、口にしない方がいい。逆に失敗は思い切り目立つ。選手からも信頼を失う。ミスが許されない環境に自らをわざわざ追い込むことになる。この手の監督が世界的に少数派である理由だ。

 森保監督が臨機応変な対応と述べたのも、本当は仕方なくという感じではなかっただろうか。彼と横内監督代行の2人組は、守備的な3バックが好きなのだと思う。2人はそのスタイルで長年にわたり広島で一緒にやってきた。「私とすべて同じ」という両者の価値観は、その広島時代に培われたものだ。

 しかしA代表には長年、それとは真逆な価値観で歩んできた経緯がある。就任当初、守備的な3バックで進むべきか迷いのあった西野朗前監督も結局、ロシアW杯を従来の価値観で戦い、好成績を収めている。

 そうした流れの中で、広島時代に培ってきた守備的な3バックを披露することはさすがに難しい。彼らに、そこまでの勇気はなかった。しかしU-21は、すでにそれでスタートしてしまった。この先どうするつもりなのか。そう思っていたところ、横内氏が代行監督として采配を振ることになった。話は少々こんがらがってきている。

 現在の在り方は早急に見直した方がいいと思う。兼任監督に丸投げ。任せっきりでは、うまく行くものも行かなくなる。二兎を追うものは一兎をも得ずになりかねないのだ。

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、2018年ロシア大会で連続10回現地取材となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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