レアルが「バルサ風味のサッカー」で PSGを撃破。CL3連覇に近づく

チャピオンズリーグ決勝T1回戦 パリSG1-2(通算2-5)レアル・マドリー(写真:ロイター/アフロ)

 チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦。サンティアゴ・ベルナベウで行なわれた第1戦(2月15日)は3-1だった。レアル・マドリード有利のスコアには違いないが、アウェーゴールルールに基づけば、実質的な差は2点未満。大きな差ではない。言ってみれば67対33の関係だ。パリ・サンジェルマン(PSG)ファン、及び接戦を望む第三者にとっては、期待感を抱かせるスコアである。

 ところが、第2戦を前にネイマールが負傷。誰よりも欠けてほしくない選手が戦線離脱を余儀なくされた。67対33だった関係が、75対25ほどに広がるなか、第2戦のホイッスルは鳴った。

 最大の注目はレアル・マドリードの布陣だった。第1戦は4-3-1-2。アンカーにカゼミーロ、その両脇にルカ・モドリッチとトニ・クロース、そして2トップ下にイスコを置く、中盤ダイヤモンド型の4-4-2でスタートしたものの、サッカーは空転した。試合はPSGペースで推移。そして、前半33分、PSGのアドリアン・ラビオに、先制のアウェーゴールを許してしまう。

 前半終了間際、クリスティアーノ・ロナウドがPKを決め、レアル・マドリードは1-1にするが、アウェーゴールルールに基づく不利な状況は、後半も残り時間7分の段階まで続くことになった。

 事態が好転するきっかけは、後半34分に行なわれたメンバーの交代にある。イスコとマルコ・アセンシオ、カゼミーロとルーカス・バスケスの2枚替えだ。4-3-1-2的な、中盤ダイヤモンド型4-4-2から、中盤フラット型4-4-2への布陣変更を意味する交代でもあった。

 第1戦の試合の肝はここにあった。スコアは、サイド攻撃重視の作戦に切り替えたその交代を機に、1-1から3-1となった。それまで40対60だった両者の関係は、ここで67対33へと一気に大きく傾いた。

 レアル・マドリードはここ数年「BBC」と命名された3FW(カリム・ベンゼマ、ガレス・ベイル、C・ロナウド)を看板に戦ってきた。しかし、ベイルはケガが多く、昨季も途中から戦線を離脱した。代わって台頭したのがイスコだった。

 当初の位置づけは3FWの一角。サイドに割り当てられたが、本来は中盤の選手。攻撃的MFである。したがって試合が始まると、居心地のよさを求めてか、真ん中付近に入り込み、C・ロナウド、ベンゼマの下で構える2トップ下のようにプレーする時間が増える。

 小さくて巧い10番、ファンタジスタ系のテクニシャンだ。ファンもメディアも、そんなイスコのプレーを絶賛した。布陣も、彼をフィーチャーする4-3-1-2に変化した。

 だが一方で、サッカーはそれ以来、真ん中に固まり始めた。イスコとモドリッチのキャラが重なる弊害も露呈した。ボールを失う場所は3FW時代より真ん中に偏り、逆襲を食いやすいパターンに陥った。

 カーディフで行なわれた昨季のCL決勝、対ユベントス戦も同様だった。途中まで試合は、実力差の割にはいい勝負になっていた。レアル・マドリードが実力通りの力を発揮したのは、イスコに代わりマルコ・アセンシオが投入されてからだった。そのマルコ・アセンシオが4点目となるダメ押しゴールを奪う姿を現場で俯瞰しながら、3連覇がかかる来季のレアル・マドリードを思ったものだ。

 サイド攻撃を重視した3FW系、もしくは中盤フラット型4-4-2系のサッカーでいくのか。あるいは2トップ下(イスコ)をフィーチャーした、それとは真反対の性格の布陣でいくのか。

 後者でいくと危ない。PSGに逆転の目は残されている。3-1で勝利した先月15日以降のレアル・マドリードをそうした目で見ていたが、ジダンはこちらの懸念を察してか(そんなハズはないか)、PSG第1戦の後半34分以降のサッカーを選択した。イスコではなく、ルーカス・バスケス、マルコ・アセンシオを優先させるサッカーだ。心配は杞憂に終わりそうな気配を漂わせながら、この第2戦を迎えた。

 スタメンに両サイドアタッカーの名前を見た瞬間、レアル・マドリード有利を確信した。75対25の関係は、80対20にまた一歩傾いた。

 後半6分にC・ロナウドが奪った、通算スコアを4-1とする決定的な先制ゴール(アウェーゴール)は、ルーカス・バスケスの折り返しを頭で叩き込んだ、まさにサイドアタックの産物だった。PSGの右サイドバック、ダニ・アウベスへプレッシャーを掛け、ボールを奪取するその一歩手前のアクションも、4-3-1-2では生まれにくいプレーになる。

 後半21分、PSGのイタリア人MFマルコ・ヴェッラッティが退場処分を課せられる以前から、試合はすでに決着していた。

 PSGには運のなさを感じる。相手がレアル・マドリード以外なら、ネイマール不在でも互角かそれ以上の関係で戦えていただろう。力のある選手は揃っていた。

 不足している点をあえて言うなら、チーム力としてのしぶとさだ。ブンデスリーガ同様、フランスリーグもいわば「無風地帯」だ。PSGは現在、モナコに14ポイントもの大差をつけ、首位をいく。

 ピレネー山脈の向こう側にあるスペインリーグ、あるいは、ドーバー海峡の先にあるイングランド・プレミアリーグに参戦していれば──と思いたくなる。レアル・マドリード、バルセロナ、アトレティコ級のチームと普段のリーグ戦で対戦する機会がない弱みが、PSGには見て取れる。

 CLの決勝トーナメントで強者と対戦し、したたかな戦いができずに、トーナメントの舞台から消えていくというパターンを何年も繰り返す姿が、哀れに見えて仕方がない。フランスでは断トツのナンバーワン。だが近年のCLではベスト8が最高位。このギャップを解消するのは簡単ではない。お金では解決できない問題かもしれない。

 一方、レアル・マドリードは3連覇に向けて視界良好だ。なにより、もはや国内リーグで優勝を狙わずに済む利点がある。国内リーグでテストを重ね、本番(CL)に臨むというパターンを成立させることができる。

 スタイル的にも方向は見えたはずだ。ベイル、ルーカス・バスケス、マルコ・アセンシオ等のサイドアタッカーをフィーチャーしたサイド攻撃重視型。これは、バルサの伝統であると同時に、最近のバルサが忘れたサッカーでもある。

 バルサが忘れたバルサらしさを、気がつけば備えることになったレアル・マドリード。CLでは、スペインリーグで首位を走るバルサより、断然、優位な位置に立ったように見える。

(集英社 webSportiva 3月7日掲載)

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、2018年ロシア大会で連続10回現地取材となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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