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日本にチャンスあり? ロシアW杯グループHは最大の接戦区。ブックメーカー各社が示す根拠とは

杉山茂樹スポーツライター
2018W杯ロシア大会組み合わせ(写真・FIFAホームページより)

 ロシアW杯。抽選会が行われ、グループリーグの組み分けが決定した。A組からH組まで計8組の行方を、ここでは大手ブックメーカーの突破予想オッズを参考にしながら、占ってみることにしたい。

 接戦の組が少ない。抽選結果の感想を一言でいえば、そうなる。ほとんどの組で、グループリーグを突破しそうな強者と、落選しそうな弱者に色分けされている。ベスト16に駒を進めそうなチームの7割方は、すでに見えたも同然の状態にある。

 4年前の前回ブラジル大会は、そうではなかった。混戦が予想される組が多くを占め、予想するブックメーカーも頭を悩ませていた。例えばイタリア、ウルグアイ、イングランド、コスタリカが一緒になったD組だ。混戦模様を象徴する、まさに「死の組」だった。その結果、勝ち上がったのは、2番手予想のウルグアイと最下位候補のコスタリカ。伝統国イタリア、イングランドの敗退は、世界に大きな衝撃を与えた。

 日本が戦ったC組(コロンビア、コートジボワール、日本、ギリシャ)も、勝ち上がったのは、コロンビアと、ブックメーカーの予想で最下位だったギリシャだった。

 2010年大会の覇者で優勝候補に推されていたスペインが、グループリーグ(B組)で敗退する事件も起きた。

 ブックメーカーの正解率は8組中2組。わずか25%に留まった。今回もなにがしかの事件は起きるだろうが、大会前から、その気配を漂わせていた前回とは、様相は異なる。「無風区」が多く存在する、番狂わせの発生確率が低そうな抽選結果になった。上位国がネームバリューに相応しい良質なサッカーを展開していることにそれは起因する。番狂わせは、運が3割を占めると言われるサッカーならではの特性が、存分に発揮されない限り発生しそうもない状況だ。それでも番狂わせは起きるのか。

 

【A組】開催国ロシアとエジプトの関係に注目

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 ブックメーカー各社の見立ては、「ウルグアイとロシアの首位争い」だ。しかし、2番手と予想されたロシアは開催国だ。ホームの利が思い切り見込めるにもかかわらず、首位には推されなかった。信頼されていない証である。昨年のユーロ2016本大会ではグループリーグ落ち。戦いぶりも冴えなかった。前回ブラジルW杯でも、同様にグループリーグ落ちだった。上積みが見込める要素がホームの利のみならば、ウィリアムヒル社以外のブックメーカーから2.20倍と高い評価を得ている3番手候補エジプトにもチャンスはある。事件は起きるのか。

【B組】無風区。首位で通過するのはスペインかポルトガルか

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 スペインとポルトガルが抜けた力を持つ無風の組。両国は歴史を踏まえれば敵国関係にある。ユーロ2004でも開催地の招致活動でしのぎを削り、その結果、軍配はポルトガルに挙がった。本大会でも同じグループとなり、これまたポルトガルがスペインに勝っている。ユーロ2016を制し、その後も高位安定のたポルトガル。対するスペインも昇り調子だ。両国の首位争いは見もの。ブックメーカー各社はスペインわずかに有利と見ている。

【C組】等間隔で並ぶ4チーム。デンマークとペルーの関係に注目

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 4チームが均等な間隔で並ぶ、いわば順列がハッキリしたグループ。つまりフランスの首位は堅い。今回こそはと意気込んでいるのは、2010年南アW杯で日本にFK2発を浴び、まさかのグループリーグ落ちを喫したデンマークだ。2位候補。ペルー、オーストラリアに追われる立場にあるが、天の配剤に従えば、今回は大丈夫か。国際舞台での認知度が低いペルーとの一戦に注目したい。

【D組】波乱含み? アルゼンチンはどれほど信用できるチームなのか

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 アルゼンチンとクロアチア。アイスランドとナイジェリア。1番と2番、3番と4番が接近した関係にある。注目は、第1シードで前回準優勝国でもあるアルゼンチンが、名前通りの活躍を見せるかどうかだ。南米予選における大苦戦は、たまたまなのか、必然性に富むものなのか。ブックメーカー各社の予想によれば、第1シードの国の中で、その信頼度は8チーム中6番目と低い。若干疑って懸かかられている。予選の戦いそのままでは、波乱が起きる可能性がある。高位安定のクロアチア、真面目なアイスランド、一発の魅力を秘めたナイジェリアに対し、メッシが中盤に下がりすぎると危ない?

【E組】接戦が予想される2位争い。コスタリカは4年前の再現を狙う

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 ブラジルの1位は不動。注目はスイスとセルビアの2位争い。中でも接戦と見ているのはgamebookers社で、その差はわずか0.05倍。ないに等しい。グループリーグにおけるあらゆる関係の中で、この両国の1、2争いは接近している。前回ベスト8入りし、旋風を巻き起こしたコスタリカは4番手。ちなみに前回、ウィリアムヒル社がコスタリカに付けた突破の倍率は67倍だった。これは32チーム中、オーストラリアと並ぶ最高の倍率だが、そのチームが、ウルグアイ、イタリアに勝利。イングランドに引き分け、グループを首位通過した。まさにミラクル。しかし、まぐれ感のない必然性の高い番狂わせだった。ブックメーカー各社は4年前の再現はないと見ているが。

【F組】接戦が予想される2位争い。韓国にもチャンスあり?

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 ブックメーカー各社はE組と同じ展開だと予想する。ドイツの頭はブラジルと同じくらい堅い。注目はメキシコとスウェーデンの2位争い。gamebookers社は、スイス、セルビア以上の接戦と見て、両国に同じ倍率を付けているほどだ。しぶといメキシコ対手堅いスウェーデン。そして、その間隙を突きたい4番手の韓国に対して、ブックメーカー各社は可能性のある突破確率を提示している。ドイツという絶対的なチームが存在しているにもかかわらず、だ。韓国はブックメーカーの期待に応えることができるか。

【G組】ベルギーとイングランド。近年上昇中の2か国が首位争いを展開

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 注目はベルギーとイングランドの首位争い。近年力を伸ばしている両チームだが、ブラジル、ドイツ、フランス、スペインほどの絶対的な力はない。英国のブックメーカーはとりわけ、自国のイングランドに甘い数字を出す傾向があるので、その1.1倍台の予想は、すこしばかり盛られた数字と見るべきだろう。注目は初出場のパナマ。近年レベルを上げている北中米カリブを象徴する存在だ。軽んじることはできない。ちなみに、この組の上位2チームは決勝トーナメント1回戦で、日本が属するH組の上位2チームとたすき掛けで対戦する。日本にその動向を気にする余裕はないと見るが。

【H組】ブックメーカーの予想は接戦。日本は最良の組に入った

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 倍率を見る限り、日本はよい組みに入ったと言える。1番手コロンビアの突破倍率は、他の組の1番手より確実に高い。ブックメーカーはコロンビアを安定度の低い1番手と見ている。ポーランドへの信頼度も、思いのほか高くない。一方、日本は4社中3社から4番手の評価を受けているものの、倍率は最大でもウィリアム社の3.50倍だ。韓国がいるF組以上に、1番手から4番手までの差は小さいと見られている。つまり、H組はあらゆる組の中で最も接戦だと予想されている。抽選の結果を受け、日本のファンは意気消沈したかに見えるが、この数字を見ると俄然、元気が湧いてくる。少なくとも、振り分けられた組としてはH組がベスト。コロンビアは確かに強い。ポーランドはそれ以上に強いかもしれない。セネガルにしても、日本代表のいまの調子なら、10回戦って、2、3回勝てればいい相手だろう。しかし、それでもくじ運に恵まれたと言うべきなのだ。他の組に入らなくてよかった。ブックメーカーのオッズを見て改めてそう思う。

参考文献

●gamebookers

https://sports.gamebookers.com/en/sports

●William Hill

http://sports.williamhill.com/bet/en-gb

●bet365

https://www.bet365.com/#/HO/

●NetBet

https://sport.netbet.com/?langid=230

タイトル写真=FIFAホームページより転載

 

                                          

スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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