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嵐が去って、今度は静かなる災害”晩霜害”に十分注意を

杉江勇次気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
凍り付いた田畑の植物(写真:イメージマート)

高気圧にスッポリは晩霜害の危険なサイン

予想天気図(ウェザーマップ)
予想天気図(ウェザーマップ)

きょう9日(火)は、前線を伴った低気圧が日本付近を通過したため、全国的に雨や風が強まり、東京都心でも昼前に最大瞬間風速23.7メートルの強い南風が吹き荒れ、まさに桜の花が舞い散るような花嵐となりました。

あす10日(水)になると、荒天をもたらした低気圧や前線は、日本のはるか東へ遠ざかり、大きな高気圧にスッポリと覆われるため、全国的におだやかな晴天となるでしょう。ところがこの一見、何事も起こらないようなおだやかな天気図にもある危険が潜んでいます。それが静かなる災害とも呼ばれる晩霜害です。(春は晩霜害、秋は初霜害)

通常、太陽放射のない夜間には地表面から放射される熱によって地表の温度が下がることになり、これを放射冷却と呼んでいます。放射冷却は、風が弱く、よく晴れた日の夜間ほど顕著となるため、そのような気象条件となりやすい、高気圧にスッポリと覆われた時には、晩霜害が起こりやすくなるのです。そしてあす10日(水)はまさにその典型的な予想天気図と言えます。

全国的に、あす10日(水)朝は大幅ダウン

10日の予想最低気温(ウェザーマップ)
10日の予想最低気温(ウェザーマップ)

あす10日(水)朝の予想最低気温をみると、全国的にけさ9日(火)より5度から10度も大幅ダウンし、平年並みか平年より低い所が多くなるでしょう。そして放射冷却が効くような気象条件の場合には、郊外や内陸部で、いっそう冷え込みが厳しくなることが多いものです。

内陸中心に、晩霜害の発生しやすい4度以下に

10日の予想最低気温(ウェザーマップ)
10日の予想最低気温(ウェザーマップ)

あす10日(水)朝の面的な予想最低気温をみると、北日本や東日本、そして西日本の山沿いにも濃い青色が広がっていて、0度以下の氷点下の所が多くなるでしょう。そして少し見づらいのですが、内陸の広い範囲で、5度以下の薄い水色が予想されています。

一般に気温が4度以下になると、霜が降りやすくなるといわれています。なぜなら気温の予想は、地上約1.5メートルの高さがもとになっているのですが、放射冷却が効くような気象条件の時には、地表面近くの温度は、これよりも数度低くなることが多いためです。ですから夜間の気温がプラスだといっても、地表面近くの温度は氷点下となることも多々あるため、注意が必要です。

東北から九州の広範囲に霜注意報

霜注意報(気象庁発表をウェザーマップが作成)
霜注意報(気象庁発表をウェザーマップが作成)

きょう9日(火)夕方の段階で、上図のように、東北から九州にかけての広範囲に霜注意報が発表されています。気象台が発表する霜注意報は、春や秋に気温が下り、霜が発生することによって、農作物や果実の被害が発生するおそれのある時に、期間限定で発表されます。

あす10日(水)の朝にかけては、農作物や果実への晩霜害はもちろんのこと、ベランダにある観葉植物や家庭菜園などへの影響も強くなるため、霜に弱い植物を室内に取り込んだり、霜よけカバーをかぶせるなどの対策が必要です。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

人の生活と気象情報というのは切っても切れない関係にあると思います。特に近年は突発的な大雨が増えるなど、気象情報の重要性が更に増してきているのではないでしょうか? 私は1995年に気象予報士を取得しましたが、その後培った経験や知識を交えながら、よりためになる気象情報を発信していきたいと思います。災害につながるような荒天情報はもちろん、桜や紅葉など、レジャーに関わる情報もお伝えしたいと思っています。

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