あす24日(水)から始まる熱中症特別警戒アラートとは?どれくらい発表されるのか?
熱中症特別警戒アラートとは?
あす4月24日(水)から、これまで危険な暑さが予想される時に発表されていた熱中症警戒アラートに加え、一段と危険な暑さが広範囲に及び、より深刻な健康被害が発生するおそれがある場合に、熱中症特別警戒アラートが発表されることとなります。
これは、昨年(2023年)5月30日に、熱中症対策のさらなる強化のため、気候変動適応法の一部を改正することが閣議決定されたもので、これまでの熱中症警戒アラートを「熱中症警戒情報」として、法律に位置づけるとともに、一段と危険な暑さが広範囲に及び、より深刻な健康被害が発生しうる場合に、一段上の「熱中症特別警戒情報」を発表することが追加されました。法律上の名称は「熱中症特別警戒情報」ですが、一般名称としては、熱中症特別警戒アラートが使われます。(気象庁報道発表、環境省発表)
熱中症特別警戒アラートの基準は?
現在、熱中症警戒アラートの発表基準となっている指標は、気温だけではなく、気温と湿度、日射量など加味した暑さ指数(WBGT)と呼ばれるもので、この暑さ指数28以上で厳重警戒、31以上で危険、なかでも33以上に達する予想が出ると、熱中症警戒アラートが発表されます。今般始まる熱中症特別警戒アラートは、この暑さ指数がさらに高い35以上と予想される場合に発表されることになり、まさに命に危険が生じかねない危険な暑さの時に発表されることになります。
では統計史上、全国で最も暑かった昨年の夏を例にとり、この暑さ指数35以上の予想がどれくらい出るのか、その頻度を調べてみました。
過去最も暑かった昨年の夏、暑さ指数35以上の予想は?
昨年、暑さ指数33以上の予想が出て、熱中症警戒アラートが発表された回数は、のべ1232回にものぼり、熱中症警戒アラートが全国的に発表されるようになったこの3年間で最も多くなっています。このうち、熱中症特別警戒アラートの発表基準となる暑さ指数35以上の予想が出た場合に限定したところ、その発表回数は1割以下となり、のべ106回という結果となりました。
では、熱中症特別警戒アラートもこれくらいの頻度で発表されるのかというと、そういうわけではありません。それは熱中症警戒アラートと熱中症特別警戒アラートの発表基準には、暑さ指数の他に、その発表地点数が大きく影響してくるためです。
熱中症警戒アラートは、上図のように気象庁が全国を58の予報区に分け、この予報区内の暑さ指数発表地点の1地点でも33以上の予想が出れば発表されるのに対し、熱中症特別警戒アラートは、都道府県内の全ての暑さ指数発表地点が35以上とならなければ発表されません。
例えば、昨年、17回も35以上の予想が出た新潟県では、1日に最大4地点で35以上の予想が出ましたが、新潟県内の全暑さ指数の発表地点数は27地点もあるため、この全地点での35以上の予想はまずあり得ない状況でした。
同じく、昨年、10回、35以上の予想が出た長崎県では、1日に最大3地点で35以上の予想が出ましたが、長崎県内の全暑さ指数の発表地点数も14地点あるため、この全地点で35以上の予想もほぼあり得ない状況でした。まとめると、1日に最大で3地点、あるいは4地点で35以上の予想が出た都道府県は、長崎県、新潟県、石川県の3県のみとなっています。
多くの都道府県で、暑さ指数の発表地点数は10~20地点程度はあるため、熱中症特別警戒情報の基準となる都道府県内全ての地点で35以上というのが、いかにとてつもなく高い基準かということが分かるかと思います。ちなみに、過去最も暑かった昨年の夏でさえ、東京をはじめ、35以上の予想が1地点も出なかった都道府県は約半数に上ります。
ただこの暑さ指数を踏まえた基準の他に、もうひとつの発表基準が謳われていて、それは自然的社会的状況を踏まえた発表基準です。大規模な災害が発生し、水道や電気(冷房)が使えないなどの場合において、都道府県内全ての地点で35以上でなくとも発表基準に値するという考え方です。ただし、この自然的社会的状況による発表基準は、今年度は検討するに留め、実際に使われるのは来年度以降となる見通しです。
将来の熱波を見据えて
環境省の発表内容をみても、都道府県内の全ての暑さ指数発表地点において、暑さ指数が35以上となるのは、過去に例のない危険な暑さであり、熱中症救急搬送者の大量発生を招き、医療の提供に支障が生じるような、人の健康に係る重大な被害が生じるおそれがあるとしているため、今般運用が始まる熱中症特別警戒アラートは、将来的な熱波を想定しての環境づくりの面が強いのかもしれません。
過去最も暑かった昨年の夏でさえ、1回も発表基準には届いていない熱中症特別警戒アラートですが、かといって絶対に出ないとも限りません。もし仮にこの基準に届くと予想される場合は、発表前日の午前10時時点での予想値で判断し、前日の午後2時に発表されることになっています。