都心は初雪ならず~1℃の差~
今回の関東地方における雪予報を、簡単ながら速報的に考察しておきます。
予想通りの南岸低気圧
関東地方に雪を降らせる可能性のある「南岸低気圧」は、
予想通り、18日(水)21時の段階で、日本の南を進んでいました。
一方、降雪と密接な関係のある上空の気温はどうでしょう?
気温や風向・風速などを観測している茨城県館野の高層観測データをみてみましょう。
上空1452m(850hPa)で-2.1℃、上空778m(925hPa)で0.2℃となっており、これは都心で雪が降るかどうかのギリギリの気温だと言えます。
このあたりも、ほぼ予想通りだったと思います。(上空778mの寒気の入りが少し弱いかもしれませんが・・・)
雨雪判別表による都心の降水
では、地上ではどうだったのでしょうか?実は、冷たい雨に雪が混じったり、雪になるためには、気温の他に湿度が大きく関係しています。
その大まかな傾向を知るために、雨雪判別表というものを用いることがあります。
少し、見方が難しいかもしれませんが、これを見ると、気温がある程度高くても湿度が低ければ雪になりやすく、逆に気温が低くても湿度が高ければ雪になりにくいことを現しています。
では、東京都心で雨の降り出した頃の18日(水)15時からの大手町のデータをプロットしてみましょう。
降り出し当初は8℃程度あった気温が雨とともに下がっていきます。しかし、雨とともに湿度も上昇するため、多くの場合は上記のような左上がりのラインを描きます。
都心でもっとも雪が混じるみぞれのゾーンに近づいたのは、21時半ごろ。このころ最低気温は3.6℃まで下がりました。しかし、湿度は88%もあったため、みぞれゾーンには到達しませんでした。
その後、深夜から19日(木)朝にかけては、湿度が高いまま気温だけがじりじり上昇し、みぞれゾーンからは離れて行った様子が伺えます。これは低気圧の接近に伴って、上空に相対的な暖気が入ってきたことなどによるものだと思います。
この判別表をもとに考えると、湿度が88%程度なら、気温が約2.5℃以下でみぞれゾーンとなっており、都心でもあと1℃下がっていれば雪が混じっていたかもしれません。
内陸部で積雪とならなかった理由
今回、都心では雪が混じるかどうかという予想だったのに対して、埼玉より北の地域では、平地でも数センチの雪が積もるような予想がありました。しかし、雪が積もったのは山沿いだけで、平地では雪化粧とまではいきませんでした。
何故か?
18日(水)21時の気温をみると東京都心とほぼ同じような気温分布となっています。
これは当初の予想よりも降水量が少なく(半分以下)、降水に伴う上空からの寒気の落ち込みが少なかったため、地上の気温の下がり方も鈍くなったのではないかと思います。
このため、宇都宮ではみぞれで初雪を観測したものの、内陸部でも、多くの所でみぞれ程度で終わりました。
南岸低気圧に伴う降水現象は、まさに人の性格と同じで十人十色。今回も非常に難しいものでした。
(上図は気象庁発表資料から抜粋、加工は了承済み)