またしても昼過ぎの発生

9月2日14時頃、埼玉県越谷市から千葉県野田市付近を駆け抜けた強い竜巻。その発生時刻から、またしても「魔の時間帯」とも言える危険な時間帯での発生となりました。

竜巻やダウンバーストなどの激しい突風は発達した積乱雲のもとで発生する現象なのですが、その積乱雲が発達するためには、上空に寒気が流れ込んだり、地上に暖かく湿った空気が流れ込むなど、不安定の度合いが大きく上昇した場合がほとんどとなります。そして、この地上と上空の温度差が大きくなればなるほど不安定の度合いは増加し、積乱雲は大きく発達することになります。

一般に、地上付近で気温が最も上昇するのは昼過ぎ~夕方にかけて。つまり、この時間帯こそが積乱雲が最も発達し、激しい突風をもたらすおそれのある危険な時間帯とも言えるのです。

実際、気象庁が発表している1991年~2012年までの時刻別の竜巻(ダウンバーストを含む)発生数は以下の通りとなっています。

竜巻の時刻別発生件数
竜巻の時刻別発生件数

12時~18時の間にピークがきており、まさにこの時間帯が「竜巻発生の魔の時間帯」とも言えるものです。更に、この時間帯の中でも、最も発生件数が多いのが13時~14時にかけて。

今回越谷市で14時頃に発生した竜巻は最も危険な時間帯での発生だったことが分かります。

ちなみに、上記期間の竜巻発生数(ダウンバーストを含む)は合計341個、12時~18時の発生数は148個なので、この6時間で全体の約43%を占めています。

F2程度以上の強い竜巻発生に関して

更に、強い竜巻に関してこんなデータもあります。

竜巻のFスケール
竜巻のFスケール

過去10年間に発生したF3及びF2、またはF1~F2と推定されている竜巻(ダウンバーストを含む)は合計17個ありますが、このうち11個が魔の6時間の内に発生しています。率にすると先ほどの約43%から約65%にまで上昇する計算です。つまり、F2程度以上の強い竜巻はより不安定度の増す昼過ぎ~夕方にかけて発生する傾向が強いことになります。F3と推定されている去年茨城県つくばで起きた国内最大級の竜巻も昼過ぎの発生でした。

今回発生した越谷市の竜巻もF2以上だと思われますが、昼過ぎ~夕方にかけては、特に強力な竜巻の発生に注意を要する時間帯だと言えるでしょう。もちろん、この時間以外の発生も注意をしなければいけませんが・・・。

竜巻は台風の1億分の1の現象?

ある特定の地域における竜巻の発生予測は出来ないのか?これはよく聞かれる言葉ですが、残念ながらその答えはNOと言わざる得ません。

それは竜巻があまりにも小さすぎる現象だからです。現在、気象庁からは竜巻などの激しい突風のおそれが高まった時、主に都道府県単位に1時間有効な「竜巻注意情報」が発表されます。

しかし、1年間に発表される竜巻注意情報ののべ発表回数約1000回に対して竜巻などの突風の発生数は約20回程度。的中率にするとわずか2%程度と言ったところです。では、なぜこんなにも的中率が低いのかというと、やはり竜巻という現象の空間的、あるいは時間的スケールのあまりの小ささが挙げられると思います。

例えば、広い範囲に暴風をもたらす台風と比べてみましょう。台風の空間的スケールは直径数百キロ~千キロ程度以上。また、移動する距離も長いもので数千キロにも及びます。

これに対して、竜巻のそれは大きいもので直径数百メートル~1キロ程度。移動する距離も長いもので10キロ~20キロ程度のことが多いようです。

つまり、おおざっぱな計算をすると、竜巻の空間的スケールは台風と比べて1/1000×1/1000=1/1000000程度しかないことになります。更に、時間的なスケールも加えると、台風の大まかな継続日数である数日間と比べて、竜巻のそれはわずかに数十分程度と台風の数百分の1程度(単純に1/100とする)。

空間スケールと時間スケールを掛け合わせた現象としては、1/1000000×1/100=1/100000000となります。つまり竜巻は台風の1億分の1程度の現象と言えるほど小さいものなのです。

分かりやすく、ちょっと強引な計算をしたことは確かなのですが、これほどまでに小さな現象を正確に予測する技術は残念ながら今の気象庁にはありません。また、近い将来も困難なことは間違いないでしょう。

ですから、この夏頻発した集中豪雨のように、竜巻に関しても、少しでも空の異変、いつもと違う気配を感じたら、早めの対策、避難を心掛けるのが最善の策だと言えるのではないでしょうか。

(上図は気象庁HPから抜粋 了承済み)