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【退学しないで!急げ大学生!】現金給付二次募集締切は7月中旬!【コロナ・豪雨被災者・自宅生も利用可】

末冨芳日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員

※本記事は7月締切の大学生・短期大学生・専修学校生等の困窮学生への給付金(「学生支援緊急給付金」)について述べた記事です。情報は随時更新される可能性があります。

■奨学金・授業料支援情報は以下の記事をご確認ください。

【退学しないで!】世帯収入・バイト激減!大学生・専門学校生がいま利用できる支援制度【学費・授業料】

■高校生の授業料無償化・給付金情報については、以下の記事をご覧ください。

【退学しないで!7月の高校生編】住民税非課税高校生&コロナ等家計急変世帯が給付金申し込みできます!

■令和2年7月豪雨被災者の方で、罹災証明があり、被災により、生計維持者の一方(又は両方)が生死不明、行方不明、就労困難など世帯収入を大きく減少させている場合には、以下の日本学生支援機構の給付型奨学金(返済不要の奨学金)が申し込めます。

大学・専修学校を通じて手続きをしてください。

日本学生支援機構・給付型奨学金(家計急変)

1.ショック!困窮学生への給付金なのに学生が利用できない!?

「困窮学生の給付、申請断念相次ぐ」(時事通信7月14日記事)という報道にショックを受けた大学生・専修学校生や大学関係者も多いと思います。

FREE高等教育無償化プロジェクト(以下、FREEと記載させていただきます)の記者会見資料では、2つの問題点があることが指摘されています。

問題点1:大学の理解不足で、「経済的に困っているのに採用されなかった学生がたくさんいる」

問題点2:文部科学省の厳しい要件により、「申請しなかった人が膨大にいる」

この記事は、以下、

2.そもそも「学生支援緊急給付金とは」

3.なぜ受給できない?2つのバリア

4.締め切り間際だけどどうすればいいの?

についてまとめています。

2.そもそも「学生支援緊急給付金」とは?

 

 まずそもそも「学生支援緊急給付金」、の存在自体を知らなかったという学生さんや保護者も実は多いのではないかと思います。

 この給付金の対象は文部科学省ホームページ・「学びの継続」のための『学生支援緊急給付金』 ~ 学びの継続給付金 ~(以下、文科省「学生支援緊急給付金」HP)、によれば以下の通りとなっています。

◇大学生・短大生・専修学校および、日本語教育機関に在籍する、日本人学生と留学生

◇家庭から自立してアルバイト収入により学費等を賄っている学生等で、今回の新型コロナウイルス感染症拡大の影響で当該アルバイト収入が大幅減少等することにより、大学等での修学の継続が困難になっているもの

◇対象者: 約43万人

◇給付額: 住民税非課税世帯の学生 20万円/上記以外の学生 10万円

3.なぜ受給できない?2つのバリア

 この制度をなぜ困窮学生が受給できないのでしょうか?

 バリアは2つ、(1)大学・専修学校側が制度を理解できていない(2)学生・保護者が制度を知らない/制度利用をあきらめる、です。

(1)大学・専修学校側が制度を理解できていない

 第1のバリアについて。

 文科省「学生支援緊急給付金」HPでは、困窮学生が給付金を利用できるかどうかは「最終的には、大学・専修学校側が学生の自己申告状況等に基づき総合的に判断を行う」こととされています。

 具体的な要件は6つですが、大学・専修学校側がこの6つ全部を満たしていなければならない、と勘違いしている可能性があります。

1.以下の<1>~<6>(<1>は実際には〇数字)を満たす者

(1)家庭から自立してアルバイト収入で学費を賄っていること

  <1>家庭から多額の仕送りを受けていない

  <2>原則として自宅外で生活をしている(自宅生も可)

  <3>生活費・学費に占めるアルバイト収入の割合が高い

  <4>家庭の収入減少等により、家庭からの追加的給付が期待できない

(2)新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、その収入が大幅に減少していること

  <5>アルバイト収入が大幅に減少していること(▲50%以上)

(3)既存の支援制度と連携を図り、長期的な視点からも「学びの継続」の確保を図っていること

  <6>原則として既存制度について以下のいずれかの条件を満たすこと

   イ)修学支援新制度の区分1

  (住民税非課税世帯)の受給者

  (今後申請予定の者を含む。)

   ロ)修学支援新制度の区分2・3

  (住民税非課税世帯に準ずる世帯)の受給者であって、無利子奨学金を限度額(月額5~6万円)まで利用している者(今後利用予定の者を含む)

   ハ)世帯所得が新制度の対象外であって、無利子奨学金を限度額まで利用している者

   二)要件を満たさないため新制度又は無利子奨学金を利用できないが、民間等を含め申請可能な支援制度を利用している者

※留学生については<6>に代わり、日本学生支援機構の学習奨励費制度の要件等を踏まえることとする

  イ)学業成績が優秀な者であること(前年度の成績評価係数が2.30以上)

  ロ)出席率が8割以上であること

  ハ)仕送りが平均月額90,000円以下であること(入学料・授業料等は含まない。)

  二)在日している扶養者の年収が500万円未満であること

2.1.を考慮した上で、経済的理由により大学等での修学の継続が困難であると大学等が必要性を認める者

出典:文科省「学生支援緊急給付金」HPより抜粋(一部省略・改変)

 実際には、FREEの指摘するとおり「支援対象となる学生の要件すべてを満たさない場合にも、支援対象となりうる」運用が可能です。

 文科省「学生支援緊急給付金」HPでは「上記1.を考慮した上で、経済的理由により大学等での修学の継続が困難であると大学等が必要性を認める者」とあります。

 自宅生でも、アルバイト収入がない新1年生でも、留学生で学業成績が必ずしも数値基準に達していなくても、柔軟な運用を認めています

 大学・専修学校等の関係者のみなさんは、文科省「学生支援緊急給付金」HP・特によくあるご質問をご確認いただき、個別の学生の困窮に寄り添った運用をお願い申し上げます。

(2)学生・保護者が制度を知らない/制度利用をあきらめる

 (1)で述べた状況があるために、<1>~<6>の要件すべてを満たしていなければ「学生支援緊急給付金」の申請ができないと判断し、あきらめてしまった学生がいることもFREEのステートメントには記載されています。

 また、そもそも学生・保護者が、「学生支援緊急給付金」の存在を知らない、という状況もあります。

 実は国の給付型奨学金も知られていません

 今年の4月から本格運用のため制度の情報が十分にいきわたっていません。

 ひとり親に限らず、低所得のふたり親や三世代同居世帯であっても、利用できる可能性があります。

 日本学生支援機構・給付型奨学金シミュレーターから、家計の状況をいちどご確認いただければと思います。

 上記リンクをクリックいただき、「かんたんガイド」にあるように「奨学金選択シミュレーション」から家族の所得等の情報を入力し、給付型奨学金が利用できるようであれば、「学生支援緊急給付金」の対象となります。

日本学生支援機構奨学金シミュレーター・かんたんガイドより
日本学生支援機構奨学金シミュレーター・かんたんガイドより

 

 保護者の家計急変の場合には、以下のような入力をしてみてください。

 給与が減った、解雇されたなどで、直近3か月程度と今年中の家計収入見通しをもとに計算をされると良いと思います。

 たとえば4月以降のパート収入が、月額10万円程度に減ってしまい、今後も回復することがない見通しの場合には

 10万円×12か月=120万円

 というような計算をします。

 世帯の情報を入力して、住民税の課税額がゼロという計算結果となれば、ひとまず受給資格はあることになります。

 実際には家計急変を証明する書類等の内容により住民税非課税世帯ではないとなる場合もありますので、不安な場合には大学・専修学校や日本学生支援機構に問い合わせなさることをおすすめします。

 「学生支援緊急給付金」には間に合わなくても、国の給付型奨学金は利用できる場合もありますので、シミュレーターの結果、給付型奨学金が利用できる結果となった場合には大学・専修学校に相談してみてください。

4.締め切り間際だけどどうすればいいの?まずは大学・専修学校にすぐにメールか電話!

 「学生支援緊急給付金」の二次締切は多くの大学・専修学校で7月17日もしくは24日に締め切りが設定されていると思います(日本学生支援機構の締切が7月31日であるため)。

 大学・専修学校は、書類提出の遅れを想定して早めに締切を設定していますので、この記事に気が付いて、自分が制度利用できるのではないかと思った方は、大学・専修学校にすぐにメールか電話してみてください。

5.最後に:「学生支援緊急給付金」に限らない支援策の充実を

 新型コロナウイルス災害の長期化、景気減退の長期化により、今後家計が厳しくなる世帯が増加することも予測されます。

 FREEの要望にもありますが授業料減免も重要です。

 また、国だけでなく大学・専修学校等による支援策の充実も求められます。

 あわせて、支援策がほとんどない置き去りの大学院生支援という問題も、大学院生指導を行い、またかつて大学院生であった者として、支援の充実が必要であると考えます。

 どの大学・専修学校も、学生に学び続けてほしいという願いをもって、できる支援はなるべくしたいと行動しておられます。

 学生のみなさん、使える支援はすべて使って、学び卒業しましょう!

 制度の改善や充実については私も、引き続き取り組んでいます。

日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員

末冨 芳(すえとみ かおり)、専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

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