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【退学しないで!】世帯収入・バイト激減!大学生・専門学校生がいま利用できる支援制度【学費・授業料】

末冨芳日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員
(写真:アフロ)

 

 「学生の13人に1人が退学検討 コロナで生活厳しく、団体調査」という大学生たち自身が厳しい状況を訴えるニュースが流れました。

 

 胸がつぶれる思いです、涙が出ます。

 1人の大学教員として、学び続けてほしいと思い、いそぎこの記事をまとめています。

 新型コロナウィルスの影響で、親の収入やバイト代が激減したり、アルバイトそのものがなくなってしまっている大学生に、いま利用できる支援制度をまとめました。

 この記事では学費・授業料の支援制度についてまとめていきます。

 状況に応じて随時更新していきます。

 あわせてこちらの記事もご参照ください(4/24追記)。

 【退学しないで!第2弾】奨学金以外にも使える大学生・専門学校生の生活費支援【現金給付・公的貸し付け】 

 ひとり親世帯で保護者の方と同居している場合には、生活を支える支援制度については、赤石千衣子さんのこちらの記事もあわせてご参照ください。

 新型コロナでお金に困っているひとり親家庭の方へ さまざまな支援をご紹介【随時更新】

1.困ったらまずは大学・専門学校に相談を

納付期限の延長や学校独自の給付型奨学金が利用できるケースも

 授業料などの学費関係で困ったら、まずは大学・専門学校に相談をしてください。私のつとめる日本大学では、学生課という窓口が、保護者や学生からのお金や悩みの相談を受け付けてくれています。

 基本的には、次に述べる日本学生支援機構の奨学金を利用することになりますが、たとえば授業料の納付期限を夏や秋まで延長してもらえたり、1年間に少しずつ分割で支払う分納という払い方ができる場合もあります。

 大学・専門学校によっては、経済的に困窮している学生のための学校独自の給付型奨学金や授業料免除が申し込める場合もあります。

 日本学生支援機構の奨学金の申し込みも、大学・専門学校から書類をもらったり、必要な書類について相談に乗ってくれます。

 基本的には休校でキャンパス自体が立ち入り禁止になっていると思いますので、電話やメールで問い合わせてみてください。

 長引く休校でストレスを感じる、よく眠れない、などの心理的な悩みの相談にも乗っていただける場合も多いです。

2.日本学生支援機構の奨学金は早く申し込むほど早く受けとれる!

 新型コロナウィルス対応の奨学金制度は、文部科学省「高等教育の修学支援新制度」に詳しいです。

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文部科学省「新型コロナウィルス感染症の影響で学費等支援が必要になった学生のみなさんへ」より転載

 

 大学生・専門学校生へのお金のサポートは、日本学生支援機構奨学金が基本になります。

 返済不要の給付型奨学金と、返済が必要な貸与型奨学金の2つがメインになりますが、それは次に説明します。

 とにかく日本学生支援機構の奨学金は早く申し込むほど早く受けとれるのです。

 

 授業料の足しにしようが、生活費だろうが、使途を問われることはありません。

 みなさん方が学び続けるために有効活用すればいいのです。

 だからとにかく早く申し込んで、早く受け取る、ということがみなさんが学び続けるために大切なことなります。

3.日本学生支援機構の給付型奨学金(いわゆる高等教育の無償化)の利用

家族の所得減少により住民税非課税世帯基準を満たすかどうかがポイント

 この4月から、住民税非課税基準を満たす世帯を対象とした高等教育修学支援新制度(いわゆる高等教育の無償化)がスタートしています。

 日本学生支援機構の給付型奨学金と、各大学の授業料減免とが組み合わせて利用できる、とても助かる制度です。

 卒業後の返済も不要です。

 利用できない大学・専門学校もありますのでこちらの文部科学省HPから確認してください。

 この制度のおおまかな説明や申請方法を、次のように分かりやすくまとめていただいているサイトもありますので合わせてご覧ください。

住民税非課税世帯(年収270万円未満)なら、国公立大の年間授業料約54万円が全額免除され、入学金も約28万円が減額。私立大は、年間授業料のうち約70万円と入学金約26万円が減額されます。給付型奨学金は、国公立大の自宅生で年間約35万円、私大の下宿生で年間約91万円支給されます。

出典:「コロナウイルスで学費が…悩まず相談を 大学生らの支援制度の使い方」

 新型コロナによって、家族全体の収入がおおむね月収20万円を下回る水準になってしまった場合には、利用できる確率は高いということは言えるでしょう。

 住民税非課税世帯に相当するかどうかは、家族構成などによって異なりますので、日本学生支援機構の進学資金シミュレーターを利用して確認することが大切になります。

 スマホ向けアプリもあります。

4.貸与奨学金、返済猶予もできるので、卒業を目指そう

 給付型貸与奨学金が利用できなくとも、日本学生支援機構の貸与奨学金の利用はかなり幅広く認められています。

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文部科学省「新型コロナウィルス感染症の影響で学費等支援が必要になった学生のみなさんへ」より転載

 

 無利子奨学金で世帯収入が最大で1290万円以下(子ども1~3人世帯)、有利子奨学金でも1670万円以下(子ども1~3人世帯)、となっています。

 もちろん新型コロナにより、富裕層だったが親が離婚したり、失業・倒産で急に家計が厳しくなった場合にも利用可能です。

 貸与型奨学金を借りると返済が大変という心配もありますが、無利子奨学金は卒業後の所得連動返還方式が利用できます。

 有利子奨学金も、返還期限猶予や、減額返還制度という仕組みで、返済を一時的に止めたり、返済額を減らすこともできます。

 なお無利子奨学金の、所得連動返還方式は、保証人を家族や親族に頼まず、機関保証という月々の保証金を支払う方式での奨学金利用が前提となっています。

 大学生の場合、奨学金の金額に応じて1か月につき500円~3000円程度の保証料を払うことで、保証人を頼まなくて済むという仕組みです。

 家族や親族に将来の返済の迷惑をかけるリスクを考えたとき、私は自分がかかわる学生には、無利子奨学金でも有利子奨学金でも機関保証を利用することをすすめています。

5.借金してまで大学・専門学校を卒業した方がいいのでしょうか?

 できれば卒業してほしい、というのが大学教員である私の願いです。

 学びたくて入学した学校であれば、卒業まで学べず、自分の人生に悔いを残すよりは、奨学金を利用して卒業することのほうが、みなさん方の将来にとっては大切なことだと思います。

 学歴には、知識や専門資格の取得という意味だけでなく、転職や失業といったライフイベントにおいて職業選択の幅を大きくしていくという効果もあるのです。

 次に書くように一年休学して、お金をためたり、この機会に少し立ち止まって自分の人生を考えることも、大切かもしれません。

 人生に迷ったときには、オンラインや電話でいいので、誰かに少し話をするだけでも、状況がはっきりしてきます。

 友人や家族、出身校の先生、学校の教員や学生課などの相談窓口、まずは誰かに自分の悩みや困りごとを少しでもシェアしていくことが大切です。

6.休学の場合には、在籍料に注意

 この際、休学も、という選択肢も十分に「あり」です。

 新型コロナのもとでも、生活を支える部門での雇用ニーズはあります。

「小売店崩壊」に危機感 人手不足、感染リスクも―従業員、心身に負担・新型コロナ

 感染リスクに気を付けながら、お金を稼ぎ、できるだけ貯蓄してコロナが収まるあとに備えたほうが、自分の状況を安定させることにつながるのでしたら、休学することも現実的な選択肢でしょう。

 私立大学や専門学校を休学する場合には、在籍料もかかりますのでご注意ください。

 2017年1月時点での有名私大学の在籍料をおまとめいただいているサイトもあります。

 「あなたの大学の休学費はいくら?有名私立30大学の休学費用まとめ」

 半期で5万円~8万円、年間で10万~20万円程度の大学が多いようですが、中には半期で20万円、30万円以上という在籍料を課す大学もあります。

 

 専門学校についても、学校によって在籍料に違いがあると思います。

 在籍料が変更されている場合もありますので、休学の手続きを検討している場合には、やはり大学・専門学校に直接確認していただくことが大切です。

最後に 日本政府・大学・専門学校のみなさまにお願いしたいこと

 学生たちの厳しい現状を、声を受け止め、行動してください。

学生アドボカシー・グループ 高等教育無償化プロジェクトFREE 

「新型コロナウイルス感染症の影響から大学・専門学校生を守るための緊急提言」

 大学生・専門学校生が退学しなくてすむように、学び続けられるように、できる限りの支援をお願いいたします。

 新型コロナウィルス感染拡大の状況下にあって、学び続けられる環境を保障することは、いまこの瞬間に未来が閉ざされ絶望する若者を出現させないだけでなく、日本社会をともに支える社会人を育てることになるのです。

 

 家計急変の学生への授業料免除や独自給付型奨学金の拡充、休学の場合の在籍料の値下げ、オンライン学習への移行にともなうデジタル機器や通信費用などの補助制度や現物支給制度など、各大学・専門学校の判断でもできることは多いです。

 「明治学院大学が在学生に一律5万円支給 学納金納入期限の延長、奨学金も」

 また日本政府(文部科学省だけでなく、財務省や政府与党含め)は、学びを支えるための日本学生支援機構奨学金の給付型奨学金等の大幅拡充、学生支援に積極的に取り組む大学・専門学校への助成措置をいっそう拡充くださるよう、心からお願いいたします。

 この国の希望は、若者たちなのです。

日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員

末冨 芳(すえとみ かおり)、専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

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