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【退学しないで!7月の高校生編】住民税非課税高校生&コロナ等家計急変世帯が給付金申し込みできます!

末冨芳日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員
文部科学省ホームページ「高校生等奨学給付金リーフレット」

※この記事は、情報確認をしながら随時更新していく可能性があります。

7月にいますぐ読んでほしい、高校生の授業料無償や奨学給付金に関する情報をまとめました。

 新型コロナウイルスによる景気停滞の中でも、高校生・専修学校生・大学生が退学しないでほしい、学び続けてほしい、希望する進路をあきらめないでほしい、というメッセージをこめてこの記事を書いています。

 大学生むけの情報は以下の2つの記事をご確認ください。

【退学しないで!】世帯収入・バイト激減!大学生・専門学校生がいま利用できる支援制度【学費・授業料】

【退学しないで!第2弾】奨学金以外にも使える大学生・専門学校生の生活費支援【現金給付・公的貸し付け】

7月は高校生への授業料等支援にとって重要な月

 7月は高校生への授業料等支援にとって重要な月です。

 いわゆる高校の無償化(高等学校等就学支援金制度)に加え、住民税非課税世帯の高校生の学びの経費に充てられる、高校生等奨学給付金の申し込み月、あるいはお知らせが配布される月になっているからです。

 すでに6月に高校からお知らせ配布があった都道府県も多いと思います。高校生のみなさんは忘れずに保護者に渡しましたか?

 まだの場合には、すぐに学校の事務室に行くか、保護者のみなさんが高校に電話して確認なさることをおすすめします。

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  また、高校生等奨学給付金、各都道府県や学校の緊急奨学金については、随時申請(家計が急変したらすぐ申請できる)が可能になっている場合もあります。

 国の高等学校無償化以外にも、自治体・学校では様々な支援メニューを準備している場合も多いです。

 たとえば神奈川県では、私立高校生を対象に県独自に家計急変対応である私立学校生徒学費緊急支援補助をコロナ前から行っています。

 4人家族の場合、年間所得額が418万円未満で制度利用をすることができます。

 家計急変対応の制度は都道府県により、大きく異なっています

 家計が厳しくなり、授業料や校納金諸経費の支払いが難しい場合には、とにかくまずは高校の事務室に電話で相談する、が基本になります。

 どの高校もコロナの状況を深刻に認識しており、生徒さんが学び続けることを重視したアドバイスやサポートが行われると思います。

 経済的支援制度にも詳しい高校事務職員のみなさんにまず相談することが、大切です。

 また申請には、マイナンバーや課税証明書、身分証明書等が必要となります。

 ところで奨学給付金は、学校での代理受領が進められています。

 この場合、学校が受給し、奨学給付金については差額が発生すれば家庭に年度末に振り込まれる方式となります。

 奨学給付金の代理受領の場合には、学校に収める納付金等が国と都道府県からの支援で安くなる仕組みになる、と理解していただけると良いかと思います。

 ここから、

 1. 高校の無償化(高等学校等就学支援金制度)や高校生等奨学給付金の概要

 2. 奨学給付金の手続きはどうするの?家計急変の場合に制度が利用できるケース

 について説明していきます。

1. 高校の無償化(高等学校等就学支援金制度)や高校生等奨学給付金の概要

 以下、文部科学省「高校生等への修学支援」ホームぺージの情報を、簡単にまとめていきます。

 (1)国公立高校の授業料無償化、(2) 私立高校の授業料無償化、(3) 高校生等奨学給付金、の順で説明していきます。

 7月申請開始は、(3) 高校生等奨学給付金となりますが、(1)国公立高校の授業料無償化、(2) 私立高校の授業料無償化、も随時申請が可能になっています。

(1)国公立高校の授業料無償化:年収910万円未満世帯(目安)に年11万8800円を支援

 国公立高校の授業料無償化の仕組みはシンプルです。

 年収910万円未満世帯(目安)に年11万8800円が授業料支援として支給される方式です。

 

 家計に振り込まれるお金ではなく、学校が代理受領しますが、該当世帯は授業料無償になります。

 これとは別に校納金や修学旅行費等の学校徴収金を別途支払うことになります。

(2)私立高校の授業料無償化:年収590万円未満世帯(目安)に年39万6000円支給、年収590万~910万円未満世帯(目安)に年11万8800円を支援

 2020年4月から私立高校の授業料無償化の仕組みは大きく進化しました。

 年収590万円未満世帯(目安)に年39万6000円(※)支給されることとなり、私立高校に通う生徒さんの授業料負担が大きく軽減されることになりました。

(※通信制の場合は29万7000円)

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 年収590万~年収910万円未満世帯には、公立学校と同様に年11万8800円が授業料支援として支給される方式です。

 

 国公立高校と同様に、家計に振り込まれるお金ではなく、学校が代理受領しますが、所得基準を満たす家庭は39.6万円(もしくは11.8万円)と、学校の授業料との差額を支払います。

 学校によっては、就学支援金の支給額が決まるまでの間、一時的に授業料を徴収し、後で就学支援金相当額を返金する場合があります。

 この場合でも、学校において授業料の徴収猶予等の仕組みがあることも多いので、学校の事務室に相談してください。

 

 また、これとは別に校納金や修学旅行費等の学校徴収金を別途支払うことになります。

 また東京都、福井県では年収910万円未満世帯の私立高校授業料を実質無償化、埼玉県・愛知県は年収720万円未満世帯の私立高校授業料を実質無償化、神奈川県は年収700万円未満世帯まで実質無償化など、支援の手厚い都道府県も出現しています。

 逆に、年収590万円までの支援にとどまっており、低所得世帯への追加的支援のない県もあります。

 

 あまりに都道府県差が大きく、高校生や保護者が住んでいる場所によって受けられる支援に大きな違いがでており、不公平ともいえる状態になっていますが、これについては別の機会に論じることにしたいと思います。

(3)高校生等奨学給付金

 さて7月に申し込み開始となるのが、高校生等奨学給付金です。

 文部科学省「高校生等への修学支援」ホームぺージにおける「高校生等奨学給付金」には次のように制度が説明されています。

 

授業料以外の教育費(※)負担を軽減するため、高校生等がいる低所得世帯を対象に支援を行う制度です。

※授業料以外の教育費とは、教科書費、教材費、学用品費、通学用品費、教科外活動費、生徒会費、PTA会費、入学学用品費、修学旅行費等になります。

出典:文部科学省ホームページ・高校生等への修学支援

 

 ここでいう低所得世帯は、生活保護世帯と住民税非課税世帯となっています。

 受給できる金額は以下の通りです。

○生活保護受給世帯【全日制等・通信制】

国立・公立高等学校等に在学する者:年額3万2,300円

私立高等学校等に在学する者:年額5万2,600円

○非課税世帯【全日制等】(第一子)

国立・公立高等学校等に在学する者:年額8万4,000円

私立高等学校等に在学する者:年額10万3,500円

○非課税世帯【全日制等】(第二子以降)

国立・公立高等学校等に在学する者:年額12万9,700円

私立高等学校等に在学する者:年額13万8,000円

○非課税世帯【通信制・専攻科】

国立・公立高等学校等に在学する者:年額3万6,500円

私立高等学校等に在学する者:年額3万8,100円

2.奨学給付金の手続きはどうするの?家計急変の場合に制度が利用できるケース

(1)今年の住民税非課税世帯の方の手続き:新入生7~9月などが申請期限、期限は学校に確認!

 今年すでに住民税非課税世帯となっている方の手続きは、次の通りです。

 すでに書類や案内が配布されており、たとえば北海道の場合、新入生7月17日と早めです。

 (在校生は9月8日、各学校の締切はそれより1週間程度早めに設定されている可能性が高いです)

 遅れてしまいそうなときも、高校や都道府県庁に早めに相談すれば書類受付を待っていただけることがあります。

 保護者と生徒が同一都道府県在住の場合には、国公立高校も私立高校も、各学校に書類を提出することになります。

 ただし、保護者が別の都道府県に住んでいる場合には、お子様の高校に問い合わせたうえで、北海道の場合には北海道庁学事課に郵送提出することとされています。

(2)家計急変での申し込みの方は、まず所得確認のうえ、高校に確認を

(東京都の場合には8月~9月、1月が申請期間です)

 家計急変での申し込みの方は、通常とは異なる申請期限が設けられている場合があります。

 たとえば東京都の場合には、8月中旬から9月中旬、7月以降に家計急変の場合には令和3年1月に申請受付予定だそうです。

 家計急変での申し込みの方は、たとえばこちらのサイトから住民税額の計算をすることができます。

 給与が減った、解雇されたなどで、直近3か月程度と今年中の家計収入見通しをもとに計算をされると良いと思います。

 たとえば4月以降のパート収入が、月額10万円程度に減ってしまい、今後も回復することがない見通しの場合には

 10万円×12か月=120万円

 というような計算をします。

 世帯の情報を入力して、住民税の課税額がゼロという計算結果となれば、ひとまず受給資格はあることになります。

 実際には家計急変を証明する書類等の内容により住民税非課税世帯ではないとなる場合もありますので、不安な場合には高校や各都道府県庁に問い合わせなさることをおすすめします。

 

 「保護者等全員の住民税所得割」が非課税となっていることが前提となりますので、保護者が2人いる場合には、両方とも非課税となっていることに注意してください。

 実際の申請書類の例はこのようなものとなっています(北海道の例)。

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 正直、私でも記入がしづらいので、書類作成が苦手だという方は、事務室などで直接アドバイスをもらいながら書類記入できるようサポートしてくださる高校もあります。

おわりに

 高校生や保護者の方は、いまはなんとかなっていても、秋以降に家計急変する場合もあるかもしれません。

 とにかく、家計が苦しくなったら、ためらう気持ちもあるかもしれませんが、まずは高校の事務室や信頼できる先生に相談してください。

 学び続けることは、将来の進路を切り開くうえでも大事です。

 みなさん方が学び続けること、応援しています!

日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員

末冨 芳(すえとみ かおり)、専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

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