今年で72回目となる『NHK 紅白歌合戦』。

 今回は東京・渋谷のNHKホールが改修中ということもあり、はじめて有楽町の東京国際フォーラムで開催される予定だ。

 昨年は新型コロナウイルスの感染拡大によってはじめて無観客開催を余儀なくされたが、今年はなんとか観客の前で生放送となるようだ。

 昨年の視聴率は、第1部が34.2%、第2部は40.3%とその前年よりも持ち直した。もちろん、感染拡大の第3波が生じていたことによる、巣ごもり特需だろう。

 会場を複数に分けたり一部で録画映像を使うなどした演出は、賛否両論だったようだ。「『紅白』らしくない」との批判もあったが、「余計な演出がなくて良かった」との肯定的意見も散見された。なんにせよ、第2部が過去最低だった2019年から持ち直したのは間違いない。

図1(筆者作成)
図1(筆者作成)

 現在も40%前後の視聴率となる『紅白』は、受信料で運営される公共放送・NHKの番組ということもあって、出場者の選考基準を明示している。それが以下の3点だ。

1. 今年の活躍

2. 世論の支持

3. 番組の企画・演出

(NHK公式サイト「選考について | 第72回NHK紅白歌合戦」)

 1と2に関してはその指標も示しているが、さほど具体的ではなく、またその選考過程も公開していない。ただ、公共放送として老若男女に受け入れられる番組を目指して、なんとかバランスを取ろうとしていることはうかがえる。

 本記事は、こうした『紅白』をデータ分析で考える試みだ。3回に分けて『紅白』をデータを読み解いてで考えていく。

五木ひろしの記録もストップ

 ここ最近の『紅白』は、ベテラン勢の退場が目立っている。北島三郎や森進一、和田アキ子など、常連の勇退が続いてきた。今年も、これまで史上最多50回の出演をしてきた五木ひろしの姿はない。

 そこで、まず確認するのは出演回数(※)のだ。今年に限れば出演5回以下の出演者が64%を占め、11回以上のベテラン勢が23%を占める。前者の割合は1991年(70%)以来の高い水準となっており、かなりフレッシュな状況になった(図2)。

 もちろん、出演回数が少ないからと言って若手ばかりというわけではない。今年であれば65歳の鈴木雅之が2回目、59歳の布袋寅泰が初出演だ。ベテラン演歌勢が姿を消すなか、ベテランポップス&ロック勢が増えている傾向が見られる。

図2データは2021年12月27日現在(筆者作成)。
図2データは2021年12月27日現在(筆者作成)。

※『紅白歌合戦』では紅白で対決するメンバーを「出場者」と呼び、その枠以外の者を「特別出演」とする。この記事では「出演」に統一する。

毎年20%が新陳代謝

 72回の歴史では、出演回数の割合は図3のように変化している。

図3:今年のデータは2021年12月27日現在(筆者作成)。
図3:今年のデータは2021年12月27日現在(筆者作成)。

 1958年の第9回あたりから初出演者の割合は20%程度となり、それ以降もさほど大きな変化はない。この20年に限れば初出演者の割合は平均で19.8%、毎年10組前後が初出演してきた。

 かなり安定して5組に1組程度が新陳代謝しているので、意図的に新しい風を吹き込もうとしているのだろう。

 一方で70年代中期頃から、常連組=ベテラン勢も増えてくる。とくにその傾向が強まるのは80年代だ。11回以上出演するアーティストは、1983年にはじめて40%に達する。

 だが、この直後の1985年以降に番組視聴率が約80%から50%台に急落。その後、1989年に2部制にする改革もあって常連組も減るが、90年代後半からまた増えてくる。11回以上出演した常連組は、2001年と2006年には44%と、過去最高の割合となり、この流れは2013年まで続く。

 こうした展開を踏まえると、北島三郎や森進一、そして五木ひろしの退場は、やはり常連組の存在を意図的に減らす策だったように思える。

図4:データは2021年12月27日現在(筆者作成)。
図4:データは2021年12月27日現在(筆者作成)。

 歴代の出演回数を確認すると、今年も20回以上を重ねるアーティストが7組登場する(図4)。なかでも2015年を最後に勇退していた細川たかしが復活出演をするのは意外だった。

 今後は、郷ひろみなどのアイドル出身者や、若手として演歌を牽引してきた氷川きよし(最近は演歌以外を歌う姿も目立つが)がどこまで出演を重ねるかが注目される。