避けられたはずのSMAP解散──誰も幸せにならなかった結末

不可解なタイミング

 8月14日未明、SMAPが年内いっぱいで解散することを正式に発表しました。

今年1月の解散騒動以降も、解散説をうかがわせる複数の出来事が見られました。たとえば『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)内での人気コーナー「ビストロSMAP」では、観覧客を入れずに収録されてきました。いま思えば、これはメンバー同士の関係をファンに見られないようにするための策だったのでしょう。また、夏の音楽番組への出演もなく不仲説も続いていました。

こうしたこともあり、メンバーの契約更新がある9月になんらかのアクションがあると考えられてきましたが、それがやや前倒しで発表されたという印象です。もしかすると、明日(15日)の『SMAP×SMAP』放送でなんらかのアクションがあるのかもしれません。しかし、このタイミングでの発表はやや意外でもあります。

なぜなら、TBSのリオデジャネイロ・オリンピック中継のメインキャスターは中居正広さんで、テーマソングもSMAPの「ありがとう」だからです。今日(14日)は女子マラソンが中継され、今後もTBSは16日(火曜日)と21日(日曜日)にオリンピックの中継(陸上など)を予定しており、中居さんはもちろん出演予定です。生放送ですから、当然中居さんにも注目が集まります。ですから、このタイミングというのはかなり不可解に思えます。この発表は、1週間後でも良かったはずなのです。

 それにしても、このSMAPの解散はやはり日本の芸能界にとっては、ひとつのメルクマールとなる事態でしょう。1988年のグループ結成、1991年の歌手デビュー以降、四半世紀に渡ってSMAPは日本の芸能界を牽引してきました。その存在が従来のアイドルと違ったのは、音楽やドラマだけでなく、バラエティ番組にも積極的に進出したことです。つまり、マルチな活躍をしてきました。それまでのアイドルではありえなかった道を切り開いた、画期的な存在がSMAPでした。

そんなSMAPが、年内で解散します。日本の芸能界にとって、それがとても大きな損失であることは言うまでもありません。マネージャーの退社に端を発した独立騒動と、それによって生じたメンバー間の溝は、想像以上に埋め難かったのでしょう(詳しくは、「存続するSMAP、民主化しないジャニーズ」参照)。

しかし、解散を避ける道は本当になかったのでしょうか?

メンバーの温度差

 ここで、正式に発表されたメンバー全員とジャニーズ事務所のコメントについて、簡単に読み解いてみましょう。

 まずメンバーですが、やはり木村拓哉さんと他の4人との温度差がそこに見て取れます。木村さんは、「正直なところ本当に無念です」「本当に情け無い結果」と解散に納得していない様子が強くうかがえます。

 それに対して4人は、ファンへの謝罪はあるものの非常に形式的な内容です。ただそのなかで唯一明確な主張と読み取れるのは、稲垣吾郎さんの「どうか僕達の意思をご理解頂けたらと思います」という一言です。キムタクと異なり、そこには解散の明確な決意がうかがえます。

 こうしたことから感じられるのは、やはり1月の番組内会見でも感じられたキムタクと4人の関係がいまだに修復できていない状況です。だからこそ解散という道を選択することになったのでしょう。

 一方、ジャニーズ事務所のコメントでは、解散の理由がかなり具体的な事例をあげて説明されています。それが以下の部分です。

しかしながら議論を続ける中で「今の5人の状況ではグループ活動をすることは難しい」というメンバー数名からの要望を受け、7月の音楽特番を辞退させて頂いた経緯がございました。8月に入り、待っていて下さる方々の為にも、落ち着いて考える時間を持ち、前向きな状況が整うまでグループ活動を暫く休むことを提案致しましたが、メンバー数名より「休むより解散したい」という希望が出たことを受け、苦渋の選択ではございますが、これまで一生懸命に走り続けた彼らの功績を尊重し、全員一致の意見ではないものの解散したいと考えるメンバーがいる状況でのグループ活動は難しいと判断し、本日の御報告となりました。

出典:ジャニーズ事務所「弊社所属アーティスト『SMAP』今後のグループ活動につきまして」

ここで事務所は、解散はあくまでもメンバーの希望であり、その回避に向けて努力してきたことを強調しています。おそらくそれに嘘はないのでしょう。メンバーたちのコメントと照らし合わせても、矛盾しているところはありません。

ただ、やはりこういう結果になったのは、そもそもジャニーズ事務所に姿勢に問題があったからです。それが、『週刊文春』2015年1月29日号におけるメリー喜多川副社長のSMAPチーフマネージャー・飯島三智氏に対する叱責でした。そのなかでメリー副社長は、嵐とSMAPを比べてこう発言したことが波紋を呼びました。

「だって(共演しようにも)SMAPは踊れないじゃないですか。あなた、タレント見ていて踊りの違いってわからないんですか?[中略](SMAPは)踊れる子たちから見れば、踊れません」

出典:『週刊文春』2015年1月29日号(文藝春秋)より

 結局のところ、今年90歳になる副社長の強権的な姿勢が、今回の騒動を導いてしまったといえます。よってジャニーズ事務所がいくら解散回避の努力をしたと主張しても、時すでに遅しという印象は拭えません。

 そして、この結末によって誰ひとりとして幸せになった者はいません。SMAPメンバーはその人気に大きなダメージを負い、ジャニーズ事務所には保守的かつブラック企業のイメージがこれからもまとわり続けます。音楽や放送、CM業界は大切なプレイヤーを失い、チーフマネージャーの飯島三智氏は実質的に業界を追い出されました。なにより、もっとも傷ついたのがファンであることは言うまでもありません。

 これは、最悪の結末としか言えません。

のれん分けの失敗

 こういう結果となったいま言っても仕方ないことかもしれませんが、解散を回避する可能性はゼロではなかったはずです。それは、ジャニーズ事務所の柔軟な姿勢によって可能でした。なぜなら「のれん分け」とも言うべき、マネジメントの分割がありえたからです。

 SMAPには、グループとしての活動と、メンバー個々人の活動のふたつがあります。メンバーたちが企図したのは、チーフマネージャーだった飯島氏とともに独立することでした。要はそれを認めれば良かったのです。キムタクだけがジャニーズに残る選択をするならば、それで良かったのです。つまり、メンバーの活動はジャニーズと独立した新事務所に分けるという策です。

 一方で、グループとしてのマネジメントは、ジャニーズか新事務所のどちらかが一括して引き受けるという形式を採ることが可能でした。ジャニーズはここを譲らない代わりに、独立は譲歩するという手もあったはずです(図参照)。

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グループとメンバー個々人をべつの事務所がマネジメントするという例が、過去にどれほどあったのかはわかりません(【追記】AKB48グループは、メンバーがそれぞれ異なる事務所に所属しており、グループのマネジメントをAKSがしています)。ただ、そうした提案をし、資本関係はないながらも新事務所に「のれん分け」するという可能性はあったはずです。それによってファンもメンバーもジャニーズも飯島氏も、全員がマイナスを最小限にできる道、あるいはさらなるプラスにつなげる道はあったはずです。

 しかし、ジャニーズはそうした提案をしなかったのです。もちろんメンバーがそれで納得したかはわかりませんが、そうした道は飯島氏を会社から追放した早い段階で絶たれてしまいました。

予想される将来

 今回のジャニーズの選択ゆえの結末とは、もちろん合理的な判断によるものではありませんでした。誰も幸せになっていない以上、それは自明です。

ジャニーズ事務所のこうした姿勢とは、俯瞰すれば高度経済成長期によく見られた一族経営の中小企業が、後期近代社会の流動性に適応できず、減衰していくプロセスに入った状況だと捉えられます。

この場合、将来的に起こりがちなのは代替わりの際の混乱です。具体的には、先代ほどの信頼を得られない2代目(後任)からひとが離れていくのです。ジャニーズの場合、組織を維持してきたメリー&ジャニー姉弟の持つカリスマ性と強権性を、2代目の藤島ジュリー景子さんがカバーしきれないことは容易に想像がつきます。

それは、さまざまな中小企業でしばしば見られてきたことです。「義理や人情」や「世襲」といった旧い価値観をなかなか持てなくなっている時代に、2代目に信望がなければ、簡単に混乱が生じます。非民主的で閉鎖的な組織で成員を繋ぎ止めていた「感情」という紐帯が失われれば、その成員は理性的に民主的な手続きを模索します。よって、2代目は体制を変化させるかどうか判断を迫られます。しかし、2代目が新たな道に踏み出すことを避けて衰退していく状況は珍しくありません。

今年、メリー喜多川副社長は90歳、ジャニー喜多川社長は85歳になります。ジャニーズ事務所が現体制を維持し続けるのは、おそらくそう長くはありません。こうした状態であれば、将来的に上手く代替わりして存続することはかなり難しいのではないかと業界では噂されています。つまり、分裂するのではないかと予想されています。

SMAPメンバーは、解散してもジャニーズに留まることになっています。これは異例のことです。とは言え、解散が決定した以上、実はそれほどジャニーズに留まる理由は多くありません。

 将来的に、4人がまたべつのアクションを起こすことは十分に考えられるのです。