2度目の防衛戦を控えた日本スーパーフライ級チャンプ
「お前、背負っているものがあるんだろう。チャンピオンだろう。ベルトを失ったら、誰も見向きもしてくれないぞ!! チャンピオンっていうのは、皆に追われる立場なんだ。その覚悟を持て!」
都内、五反田のワタナベジムに小口忠寛トレーナーの怒声が響く。ヘばりそうになりながらも、ミット打ちをこなすのが日本スーパーフライ級チャンピオン、高山涼深(27)だ。高山は4月25日に2度目の防衛戦のリングに上がる。
昨年11月に左第3中手骨を骨折し、12月14日に催される筈だった中村祐斗戦がキャンセルとなった。骨折してから1カ月後に痛みが引いたが、50日間はサンドバッグを打つことさえ出来なかった。
高山は振り返る。
「小口さんからは、『右腕一本でも練習しろ』と言われていたんですが、左が打てない状態では気持ちが入らなくて、ロードワークだけでした。正直、モチベーションが落ちていました。一日に10kmは走っていましたが……。
今は戻りましたよ。本格的にスパーリングを中心としたジムワークを始めたのは3月の頭です。まだまだ本調子ではないですが、試合までには必ず仕上げて、ベストコンディションでリングに上がります」
今回の挑戦者は六島ジムの古谷昭男。小口は古谷をこう評する。
「きれいなワンツーを打ちますね。基本に忠実で、粘り強い選手だという印象があります」
高山も、語る。
「メンタルが強く、頑張る人です。ストレートにキレがありますね。中間距離で淡々と戦うタイプですが、僕の懐に入らせないようにすることが課題になりそうです。彼のストレートを警戒し、きちんと準備します。こちらは足が強みだと考えています。自分の俊敏性を生かして、得意の左ストレートで倒しますよ」
デビュー以来、7戦全勝6KOと順調に歩を進めてきた高山。中学生の頃から指導を受ける小口トレーナーは、試合当日までに何度も山を設けそうだ。
「今は無理をしろ。そうすることで、当日、お前のボクシングが出来る。自分で限界を決めずに、己を超えてみろ!」
練習で絞られた高山は結んだ。
「自分の夢は、伯父である渡辺雄二を超え、30歳までに世界王座に就くことです。防衛を続け、35歳くらいでいい終わり方をしたいですね」
高山の戦いは続く。