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「這い上がる!」日本フェザー級1位の告白

林壮一ノンフィクションライター
画像:山口 裕朗

 3月12日、日本フェザー級1位の中川公弘(32)が、同5位の殿本恭平と8回戦で拳を交え、0-3の判定で敗れた。2020年12月19日に8回戦で対峙した際にも勝てなかった。前回の雪辱を果たすことを誓ってリングに上がった中川だったが、残念な結果に終わった。

画像:山口 裕朗
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 今回、中川はどう相手の懐に入るかをテーマに練習を重ねた。そしてファーストラウンド、中川が距離を詰めたところで、顎ヘのアッパーを喰らって視界が揺れる。

 「それで動揺してしまったんです。中に入り辛くなりました。攻めなきゃ、ポイントをとり戻さなきゃと思いながらも、ペースを掴み切れない自分がいました。

 殿本選手が予想以上にグイグイ前に出てきて、前回よりも成長していることを痛切に感じました。1戦目の殿本選手のイメージしか持っていなかったんですよね。僕が1位で彼が5位ですから、上位ランカーを食ってやろうという強い気持ちも伝わってきました」

画像:山口 裕朗
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 自分のボクシングができない中川は、必然的に焦りを感じる。

 「どこかでチャンスがあるだろうと。ポイントを失っているので、一発を狙った部分もあります。ても、彼はそれに気付いていましたね。だから、大きなパンチじゃ当たらないだろうとも思いました」

画像:山口 裕朗
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 中川の右ストレート、右フックが時に殿本の顔面を捉えたシーンもあった。しかし、中川は序盤のダメージがフラッシュバックするのか、攻撃が続かない。

 「手を出さずに、見ちゃいましたね……自分の距離で戦えなかった。3つ、4つ、5つとコンビネーションが出せませんでした。初回の一発を警戒してしまう自分がいたんです」

画像:山口 裕朗
画像:山口 裕朗

 第7ラウンド、中川は左フックをクリーンヒットしてダウンを奪う。そこでも攻め切れなかった。

  「あのチャンスも、ひょっとするとフラッシュだったかな…という思いがあって、相手がまだ決定的なダメージを受けていない、死んでいないなって、行けませんでした。自分が積み重ねてきたことを、出せなかった点が悔しいですね。

 試合というのは練習以上のことは絶対に出ないので、また一から出直しです。中に入ってからのコンビネーション、連打、ポジショニングなどを課題にやっていきます」

画像:山口 裕朗
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 中川の所属するワタナベジム・渡辺均会長は言った。

 「彼は、ディフェンスはいいんですが、攻撃力が問題です。性格の良い青年なので、出直させたいと考えています」

 中川は間もなく、練習を再開する。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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