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統一スーパーミドル級王者vs.43戦全勝の元WBO世界スーパーウエルター級チャンプ

林壮一ノンフィクションライター
(写真:ロイター/アフロ)

 60勝(39KO)2敗2分の統一スーパーミドル級王者、サウル・"カネロ"・アルバレスが、5月4日に43勝無敗34KOのハイメ・ムンギアと拳を交えることとなった。

 ムンギアは、今年1月にジョン・ライダーを相手に9ラウンドTKO勝ちを収めた。その試合ぶりは、彼のキャリア内で最高のパフォーマンスだとする声が多い。カネロも2023年5月にライダーと対戦し、ダウンを奪いながらワンサイドの判定で勝利したが、仕留め切れなかった。

写真:ロイター/アフロ

 ライダーを座標軸に考えれば、ムンギアにチャンスがあるとも感じられる。何より、ムンギアは今日、フレディ・ローチ氏の指導を受けている点が大きい。

 カネロ対ムンギアは、160パウンドを超えるタイトルを懸けた初のメキシコ人対決となる。しかも、フランス軍を撃退したことを記念する5月5日のメキシコの祝日<シンコ・デ・マヨ>前日の開催だ。

写真:REX/アフロ

 ムンギアはこれまで、ディフェンスが課題とされながら、力任せにパワーパンチを振るうタイプとしてキャリアを重ねてきた。しかし、ライダー戦では、防御に著しい進歩が見られた。固いガードを見せ、ジャブを効果的に使った。ステップも以前の彼とは見違えるものだった。WBOスーパーウエルター級王座に就いていた頃とは雲泥の差だ。ローチのコーチによる進歩が窺える。

写真:REX/アフロ

 とはいえ、ムンギアのディフェンスがカネロに通じるかは微妙だ。百戦錬磨のカネロは、駆け引き、フェイントの使い方、フットワークで6歳下の若者よりも優っていそうだ。

 ムンギアの武器は若さと勢い、そして183cmという体躯だ。身長では10cmものアドバンテージがある。

Esther Lin/SHOWTIME
Esther Lin/SHOWTIME

 カネロは昨年9月に、2階級下のスーパーウエルター級4冠統一王者、ジャーメル・チャーロと戦い、7回にダウンを奪いながらもKOを逃している。6.35kgの差は如何ともし難く、チャーロは何も出来ないまま、試合終了まで持ち堪えることだけを目標とするしかなかった。今回、双子の兄であるジャーモールがカネロの対戦相手の候補となっていたが、メキシコの人気王者は、同胞の若手を選択した。

 直近の3試合でノックアウトを逃しているカネロ。33歳の彼は、<シンコ・デ・マヨ>で自らを祝福できるか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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