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WBO暫定ヘビー級王者

林壮一ノンフィクションライター
(写真:ロイター/アフロ)

 元世界ヘビー級チャンピオンのジョセフ・パーカーが、先週金曜日の夜、サウジアラビアのリヤドで行われたWBO暫定ヘビー級タイトルマッチで判定勝ちを収め、同ベルトを手にした。

 パーカーは3ラウンド、8ラウンドと2度ダウンを喫したが、ジャッジは113-113、114-112、115-111と採点した。

写真:ロイター/アフロ

 パーカーが空位決定戦でアンディ・ルイス・ジュニアを下してWBOヘビー級王座に就いたのは2016年12月10日。その後、2度の防衛に成功。が、2018年3月31日にWBA/IBFの2冠王者だったアンソニー・ジョシュアとの統一戦で大差判定負けを喫し、無冠となる。

 2022年9月24日には、WBO暫定王座決定戦に出場するも11ラウンドTKO負け。それでも、リングに固執した。

写真:ロイター/アフロ

 昨年末、デオンテイ・ワイルダーから白星を挙げた折にも「番狂わせ」と報じられたパーカー。今回は劣勢に立たされても動じず、張に食らいついた。張戦の勝利によって、スポーツ総合チャンネルであるESPNは、パーカーをヘビー級のトップ5に選出。32歳のニュージーランド人にとっては大金星であった。

 パーカーは今日も虎視眈々と王座返り咲きを狙い、さらなるビッグマッチを見据えて調整中だ。

写真:ロイター/アフロ

 試合後、パーカーは言った。

 「これは素晴らしい勝利だ。張はタフで、私を2度もダウンさせた。それだけに……とてもうれしい。我々は再戦の約束をしたうえで契約書にサインしているので、もう一度戦うつもりだ」 

写真:ロイター/アフロ

 26勝(21KO)2敗1分となった張は、第3ラウンドに左ストレートでパーカーの腰を落とした。パーカーは鼻血を出しながら40歳のチャイニーズファイターに対してアウトボックスを続けた。

 パーカーのスピードは、張を上回ってはいたが、レベルの高い試合だったとはお世辞にも言えない。

写真:ロイター/アフロ

 第8ラウンド、張は右フックでパーカーを沈める。ピンチに陥ったパーカーは、再び立ち上がり、ジャブを中心にステップを踏んだ。ペースを奪われそうになりながらも、自分を見失わず、攻撃の糸口を手繰り寄せるメンタルこそがパーカーの持ち味だ。足を止めず、張を翻弄した。ワンツーもヒットさせて勝利を呼び込んだ。

 苦労人の王座獲得に拍手を贈る一方で、ヘビー級の凋落に虚しさを感じざるを得ない。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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