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上を目指す16戦全勝13KOの世界ミドル級2位

林壮一ノンフィクションライター
Esther Lin/SHOWTIME

 16戦全勝13KOでWBAミドル級2位、WBC4位、IBF5位、WBO10位にランクされるイライジャ・ガルシアが3月30日にリングに上がる。対戦相手は、18勝(6KO)3敗1分けのケイロン・デイビス。

 立ち止まれないガルシアは言った。

 「デイビス戦が簡単なファイトにならないことは承知している。でも、通過点に過ぎない。俺が戦いたい相手は、(同じ日の興行でWBA王座を懸けて雌雄を決する)エリスランディ・ララとマイケル・ゼラファの勝者だ。デイビスに躓くわけにはいかない。

 デイビスは、今までに対戦したどの選手とも違う。だから、我々のチームは新たなゲームプランを立て、彼用の対策を練ってきた。こちらも、これまでと異なったスタイルで戦うよ。その準備を周到にしてきた。五分五分の内容になることを想定し、謙虚にトレーニングを重ねてきたよ。

Esther Lin/SHOWTIME
Esther Lin/SHOWTIME

 この試合は自分にとって良いテストになるし、世界戦に向けて必要な、自分にとってかなり重要な経験になるだろう。だからこそ、ハードなメニューをこなした。ミドル級世界タイトル戦の前座に組まれたのは、そのチャンスがあるってことさ。俺がタイトルマッチをやる実力を持っている事実を、世界に示さなければ。

 これまでのファイトは、リング上でペースを掴めたので勝てた。速度を落とすべきか、上げるべきか。それを見据えた特定の方法でトレーニングし、自分たちがやるべきプランでリングに上がった。

Esther Lin/SHOWTIME
Esther Lin/SHOWTIME

 ご存知のように俺のコーナーには、父と祖父がいる。自分は彼らを心から信頼している。家族の中にボクシングで俺ほどの成績を収めた人は一人もいない。でも、プレッシャーは無い。好きで戦っているからね。闘争本能が滾る血が我々には流れており、勝つために何が必要か、共通の考え方を持っている。

 俺は常に好戦的な姿勢を崩さない。毎日ジムでそういう練習をやっているんだ。本当に長い道程だったが。日々の努力が自分を今の場所に導いてくれた」

Ryan Hafey / Premier Boxing Champions
Ryan Hafey / Premier Boxing Champions

 一方のケイロン・デイビスは、咬ませ犬感が否めない。2021年11月、デビッド・ベナビデスと元IBF王者のホセ・ウスカテギ戦が組まれた。しかし、ウスカテギのステロイド使用が判明し、試合は中止。当時16勝(6KO)2敗1分けのケイロン・デイビスが急遽代役に抜擢された。

 そして7回でキャンバスに沈んでいる。

 デイビスも話した。

 「ラスベガスで戦うのは初めてなのでワクワクしています。試合が楽しみで仕方ありません。ガルシアに勝つことは、私のキャリアの中で素晴らしい飛躍となるでしょう。それは私が目指している世界タイトルマッチに一歩近づくことを意味します。

 ミドル級はボクシング界において、最大の注目を集めてきました。現時点ではミドル級の絶対的な存在は見当たりません。私たちのどちらかが、レガシーを引き継ぐ可能性があります。それこそが私の目標です。この試合に勝ち、エリスランディ・ララ等、タイトルを持つトップ選手との対戦を希望します。

 このチャンスに興奮していますよ。間違いなく、良い戦いになる筈。彼は飢えたファイターです。私にとって最も大事なことは、充実したトレーニングキャンプを行うことです。世間は私が何者であるかを知ることになるでしょう。

Ryan Hafey / Premier Boxing Champions
Ryan Hafey / Premier Boxing Champions

 我がチームはガルシアが実力者だと理解しています。しかし、私がこれまでの試合で直面した選手とは大きな違いがあります。私は、次は絶対に世界タイトル戦をやりたい。だからこそ、この戦いに挑むのです。

 私は長い旅をしてきました。これまでに経験したあらゆるファイトや、私が陥ったあらゆるピンチがプラスに働くでしょう。すべてが積み重なって、どんな戦いでも冷静でいられる自分を与えてくれました。トップレベルのパフォーマンスを発揮するために自分の体に何が必要であるかを認識できています。

 ジムでのトレーニングは、最強の自分になるための鍵です。休んでしまうと、自分を取り戻すまでに時間がかかります。戦闘モードでいられることが重要です」

 無敗の登り龍が勝つか、咬ませ犬が牙を見せるか 。心情的には、後者を応援したくなるが…。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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