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明日ゴング!「苦労を掛けた母のために…」日本フェザー級1位による魂のリマッチ

林壮一ノンフィクションライター
撮影:筆者

 日本フェザー級1位にランクされる中川公弘(32)が、明日、後楽園ホールのリングに上がる。対戦相手の殿本恭平とは2020年12月19日に8回戦で対峙し、0-3の判定負けを喫している。が、殿本との試合後、中川は3連勝中だ。何かを掴んだ感がある。

撮影:筆者
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 「3連勝のうち2つがKOです。パーソナルトレーナーの指導を受け、コンディションの整え方や体の使い方を学んで、成長している実感があります。うまく説明できないんですが、身体をマイナスからゼロにする。ケアする。自分の動きを細かい神経の末端にまで伝達する能力が付いてきていると思うんですよね。

 だからパフォーマンスが上がりましたし、日々の練習のなかで、パンチが打ちやすくなった、スピードもつきました。殿本選手には完敗しましたが、成長した自分でリターンマッチを戦えることが、とても嬉しいです。攻撃のバリエーションが増えましたから、格の違いを見せたいですね」

撮影:筆者
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 自信たっぷりに話す中川だが、明日の試合のテーマとして次の点を挙げた。

 「相手はリーチがありますから、距離を潰さないと何も始まりません。どう懐に入って、パンチをもらわずに戦うか、その対策を徹底的にやってきました。前々回の試合からトレーナーが変わり、基礎体力も上がったと思います」

撮影:筆者
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 1991年8月25日、埼玉県旧大宮市生まれの中川は、日本人の父親とフィリピン人の母親を持つ。

 「僕が小学3年生の時に父が蒸発したんです。まったく音沙汰の無いまま、いつの間にか亡くなっていました。父が死亡したのは、2019年9月15日だそうです。その2年後に、通知が来ました。

 母は苦労しながら、女手一つで僕と妹を育ててくれました。しゃぶしゃぶ屋のキッチンに勤めていましたが、ろくに日本語も喋れず、大変だったと思います。親孝行をするためにも、日本チャンピオンになりたいですね。それと、妹が色々僕を宣伝してくれ、チケットを売ることに協力してくれているんですよ。本当に、家族には感謝です」

撮影:筆者
撮影:筆者

 中川と筆者が初めて言葉を交わしたのは、2022年4月。彼はその時、日本フェザー級17位だった。前記したように、同年末に殿本に敗れ、ランキングは下がった。しかし、そこから這い上がり、トップコンテンダーとなった。

 明日は母に捧げる好ファイトを期待したい。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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