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東京五輪に出場した10戦全勝7KOのスーパーウエルター級

林壮一ノンフィクションライター
Adam J. Dewey/Salita Promotions

 2021年に開催された東京五輪に、アメリカ代表ボクシングチームのキャプテンとして出場したジョセフ・ヒックス・ジュニアが、デビュー以来10連勝を飾った。2023年7月にスーパーミドル級でリングに上がったヒックスだが、今回はスーパーウエルター級での6回戦となった。

 対戦相手のリカルド・ビラルバは、20勝(8KO)10敗1分けのアルゼンチン人。ヒックスにとっては、安牌だった。

 Adam J. Dewey/Salita Promotions
Adam J. Dewey/Salita Promotions

 オリンピアンには価値がある。これまで、サリタ・プロモーションによって売り出されてきたヒックスだが、マッチルームの興行にも出場している。先週は、元のサリタ・プロモーションに戻り、DAZNの放送枠で試合が組まれた。

 Adam J. Dewey/Salita Promotions
Adam J. Dewey/Salita Promotions

 スーパーミドル級でのファイトは、相手のダブついた腹が目立ったが、ビラルバはファーストラウンドに予想以上の闘志を表し、右を決めるシーンもあった。翌ラウンドも粘りを見せる。

 ヒックスは3ラウンドにペースアップし、ボディブローでビラルバを沈める。そして第4ラウンド開始早々にも、アルゼンチン人選手に連打を浴びせた。再びダウンしたビラルバはレフェリーのスティーブ・ダーハーがカウントアウトするまで、立ち上がろうとしなかった。ノックアウトタイムは、同ラウンド42秒。

 Adam J. Dewey/Salita Promotions
Adam J. Dewey/Salita Promotions

 絶対に負ける筈の無い相手との試合を重ねるヒックス。サリタ・プロモーションの社長であるドミトリー・サリタは、デビュー間もない元五輪選手を次のように評していた。

 「ジョセフ・ヒックス・ジュニアは米国で最も優秀な有望選手の一人だ。アマチュアトップだった彼の軌跡は、将来の活躍を確信させるものだ。プロでもスムーズに適応している。ジョセフは世界タイトルへの道を走る経験とスキルを持っている。彼はミシガン州出身の逸材だよ」

 そして、デビューからずっと咬ませ犬を選んできた。

 Adam J. Dewey/Salita Promotions
Adam J. Dewey/Salita Promotions

 プロ5戦目で迎えた無敗対決も、相手は4勝無敗だったがKO勝ちは1つで、ヒックスなら問題ないと踏んでのセレクトだった。しかし、ここで思わぬ苦戦を強いられ、僅差判定勝ちとなる。

 以来、更に過保護なマッチメイクが行われている。この3試合、ヒックスの対戦相手は全員が2桁の黒星を喫していた。元ナショナルチームのキャプテンが、“本物”と対峙するのはいつか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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