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92歳のプロモーター、ドン・キングが扱う元4階級制覇王者

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:ロイター/アフロ)

 WBOスーパーフェザー、WBCライト、WBAウエルター、WBAスーパーライトと4階級を制したエイドリアン・ブローナーが、 プロ41戦目のリングに上がる。6月7日の金曜日、ウルトラマリンと表される鮮やかなブルーの海が広がるフロリダ州フォートローダーデールの、ハードロック・ホテル&カジノで試合がセットされた。

 目下、35勝(24KO)4敗1分けのブローナーの相手は、16勝(10KO)1敗1分けのブレア・コブス。

David Martin / DKP
David Martin / DKP

 2019年1月19日にマニー・パッキャオの持つWBAウエルター級王座に挑戦するも、112-116、111-117、112-116の判定で敗れたブローナーは、2年以上もリングから遠ざかった。2021年2月20日に再起したが、かつての勢いは失っていた。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 そればかりでなく、何度も婦女暴行やアルコール依存症が話題となっており、ボクサーとしての晩節を汚しているように見えた。

 そのブローナーに91歳(当時)のドン・キングが声を掛け、契約を結んだのが2023年3月。そして昨年6月のファイトでは判定勝ちを収めた。

Don King Productions
Don King Productions

 今回、キングが選んだブローナーの対戦相手、コブスは、元NABFウエルター級チャンピオンである。とはいえ、約2年ぶりのリング復帰だ。「無名と呼べはしないが、咬ませ犬であることに変わりはない」といった選手を自分の持ち駒にぶつけるのだ。こうしたキングの手腕は、相変わらずだ。

David Martin / DKP
David Martin / DKP

 劇的なKOでWBCクルーザー級タイトルを手にした、27勝(12KO)2敗のノレア・ミカエルジャンもブローナーの前座で出場し、20勝(19KO)1敗のカナダ人、ライアン・ロジツキを相手に初防衛戦を行う。

 さらに、ニュージャージー州パターソン出身のイアン・グリーンWBAコンチネンタルUSAミドル級タイトル防衛戦も組み込まれた。戦績、18勝(12KO)2敗で6連勝中のグリーンは、勢いを止めずに6月7日のリングに上がりそうだ。

David Martin / DKP
David Martin / DKP

 キングは、独特の口調で捲し立てた。

 「この壮大なイベントは、世界平和の精神に基づく、偉大なる故ホセ・スライマンの生涯と遺産に敬意を表するものです。スライマン元WBC会長は、常にボクシング界の最前線で素晴らしい戦いを見せてくれましたね。今回、私共は、魅力的カードで彼に敬意を表するつもりです」

 悪徳プロモーターとして確固たる地位を築いたドン・キング。92歳でまだ、仕事への情熱が薄れない点に唸らされる。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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