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元世界ヘビー級チャンプが語る「井上尚弥と今日の最重量級との差」

林壮一ノンフィクションライター
(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 12月23日、サウジアラビア・リヤドのキングダム・アリーナで、元WBA/IBF/WBOヘビー級チャンピオンのアンソニー・ジョシュアがスウェーデン人ファイター、オット・ワリンに、5回終了TKO勝ちを収めた。

ジョシュア(右)とワリン(左)
ジョシュア(右)とワリン(左)写真:ロイター/アフロ

 2019年9月14日にWBC王者、タイソン・フューリーに挑み、判定まで粘りながらも3-0の判定負けを喫したワリン。その後、6連勝してジョシュア戦に繋げた。

 しかし、ファーストラウンドから劣勢に立たされ、第5ラウンド終了後にコーナーが棄権を申し入れる。ワリンはプロキャリア初のKO負けを味わい、戦績を26勝(15KO)2敗とした。

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 27勝(24KO)3敗となったジョシュアと、この日のセミファイナルに出場した元WBCヘビー級王者のデオンテイ・ワイルダーは、3月9日に対戦する予定だった。が、精彩を欠いたワイルダーが大差の判定で敗れたことにより、同計画は頓挫した。

12/23に判定負けしたデオンテイ・ワイルダー
12/23に判定負けしたデオンテイ・ワイルダー写真:ロイター/アフロ

 世界戦線に踏み止まったジョシュアも、早34歳。伏兵とされたアンディ・ルイス・ジュニアにKOされ、3本のヘビー級タイトルを失ったのが2019年6月。再戦で王座に返り咲くも、2021年9月、翌年8月とオレクサンドル・ウシクに連敗し、評価を著しく下げた。

 ジョシュアにとって、この日は会心の勝利だったようだが、メインイベント、セミファイナルに出場した4名のヘビー級の戦いぶりは、WBA/WBC/IBF/WBOスーパーバンタム級王者、井上尚弥のパフォーマンスとは雲泥の差だった。

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 12月23日のサウジアラビア、26日の有明アリーナでの興行を自宅観戦した元世界ヘビー級チャンプ、ティム・ウィザスプーンは言った。

 「今日のヘビー級はマジで厳しいよ。お寒い。特に、ワイルダーのディフェンスは酷い。俺が教えてやりたいぜ。その反面、ナオヤ・イノウエは実に素晴らしい。強気で技術が高く、スピードもある。野獣っぷりがファンを熱狂させるよな」

写真:Shutterstock/アフロ

 その井上尚弥は、2024年にサウジアラビアのリングに上がる可能性があるという。

 「そりゃあ、当地のファンだって、イノウエを見たいだろうよ。ボクシングの醍醐味、迫力、そして美しさを表現できるのはイノウエだからな。俺も心から期待している!」

クリスティアーノ・ロナウド
クリスティアーノ・ロナウド写真:ロイター/アフロ

 ジョシュアvs.ワリン戦のリングサイドには、現在、サウジアラビアでプレー中であるサッカー界のスーパースター、クリスティアーノ・ロナウドも観戦に訪れていた。

写真:西村尚己/アフロスポーツ

 ウィザスプーンは結んだ。

 「おお、ああいう超一流のアスリートが、これまた最高レベルのボクサーであるイノウエを見たら、感じること、学ぶものが多いだろうな。楽しみだぜ」

 今年も井上尚弥の快進撃は続きそうだ。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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