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米国で放送された井上尚弥の言葉

林壮一ノンフィクションライター
(写真:松尾/アフロスポーツ)

 かつてアメリカ合衆国ボクシング中継の2大ネットワークだったHBOとSHOWTIMEは、ビッグマッチの前に、数回に分けてドキュメンタリー番組を流した。オスカー・デラホーヤvs.マニー・パッキャオ、今年7月のテレンス・クロフォードvs.エロール・スペンス・ジュニアなど、3週ほどに分けてお茶の間に届けた。非常に見応えがあった。

写真:西村尚己/アフロスポーツ

 今、井上尚弥vs.マーロン・タパレスを米国でオンエアーするESPN+も「CAMP LIFE」と題した16分44秒の番組を、オンデマンドで放送中だ。

 同作品のなかで日本の至宝、WBC/WBOスーパーバンタム級チャンピオンは語る。

 「日本のファンに限らず、世界のファンに向けて、そんな試合(統一戦)でも、これだけの力の差があるんだというところを見せた試合をしていきたいな、と」

写真:松尾/アフロスポーツ

 <CAMP LIFE>内で、イノウエは「モンスター」、タパレスは「ナイトメアー(悪夢)」と呼ばれる。

 モンスターは、こうも言う。

 「そんなに拘りは無いんですよね。次が2階級の4団体がかかった試合ですが、気持ち的にはいつもと変わらず、自分が最高のパフォーマンスが出来る試合をしたい。2階級で4団体統一の偉業を成し遂げたいとか、ベルトを4つ獲りたいとか、そこじゃないんですよ。自分がどれだけ強い姿を見せられるか、どれだけのパフォーマンスを見せられるか、戦いたいってところなんですよ」

写真:松尾/アフロスポーツ

 そしてモンスターは続ける。

 「調整試合を挟む精神力は無いです。コケるんだったら、そっちでコケるかもしれないです。やっぱりモチベーションだったり、全てがマックスの数値に値しないで、試合に挑むことになる可能性が高いので。そっちの方が怖いなと、自分の中で思うんですよね。だったら、一つ階級を上げたとしても、その階級で強いチャンピオンに向かっていく自分のモチベーションだったり、能力の高さを期待して試合に挑んでいった方がいい結果が出るのかなと思ったし」

写真:松尾/アフロスポーツ

 「(タパレスは)技術もあるし、瞬発的な爆破力もあるし、パンチも固いんだろうなと思うし。割とこう、フルトン戦は1ラウンド目ゆっくり入ったんですけど。でも多分、入り方も全然違うと思うし。フルトン戦よりもピリつくんじゃないかと。会場も、緊張感が生まれるんじゃないかな。

 フルトンも勝ちに日本に来ていましたが、多分、その根の部分が(タパレスは)違うんですよ。確実に違うんです。だからこそ警戒しなくちゃいけないし、自分もハングリーにトレーニングに向かっています」

 圧倒的優勢と見られながらも、自分を律する井上尚弥。26日も快勝するに違いない。どんな戦いになるか、楽しみだ。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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