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貧民街から這い上がったストライカーが名監督に

林壮一ノンフィクションライター
(写真:ロイター/アフロ)

 アルゼンチン1部リーグで、古豪インデペンディエンテが復活の狼煙を上げた。10月下旬は後期のグループAで、首位を走っていた。現在は、同5位。

 8月下旬に新監督に就任した元アルゼンチン代表FWのカルロス・テベスの指導力が称えられている。

 早速、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロにコメントをもらった。

撮影:筆者
撮影:筆者

 「1984年2月5日生まれのテベスは、ご存知のようにスラムで育ちました。アルゼンチンで最も人気のあるボカ・ジュニアーズ、ブラジルの名門コリンチャンスでプレーした後にヨーロッパに渡り、ウェストハム、マンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ、そしてユベントスでは10番を背負いましたね。

写真:ロイター/アフロ

 マンUではチャンピオンズリーグで優勝、マンC時代は得点王に輝いています。ユベントスの後、また、ちょっと中国リーグに参戦した後もボカのユニフォームを着ましたね。

写真:ロイター/アフロ

 強豪チームを渡り歩きながら、テべスは名監督の哲学、戦術、トレーニング法、選手との付き合い方を学習したんです。そこが強い。

 アルゼンチンでプロサッカー選手になる若者は、貧しさから脱したタイプが多い。そんな選手たちに、どういう言葉を掛ければやる気になるか、潜在能力を引き出せるかをテべスは理解しています。

写真:ロイター/アフロ

 インデペンディエンテとは4年契約ですから、今後が、ますます楽しみです。アルゼンチン人全員の憧れの対象ですから、いかにサッカー協会に腐った人間がいても、彼に給与を払わないってことは無いでしょう。なので、いずれ代表監督になったら、面白いですね。

写真:アフロスポーツ

 テべスは12歳にして、大人のリーグに出ていました。プロと比較したら草サッカーに過ぎませんが、アルゼンチン人はそういう試合でも賭けるんです。賭ける人間のなかにはギャングもいて、いつ発砲するか分からないような輩も混ざっていました。銃が蔓延る環境で成長したんですね。

 テべス自身『サッカーが無ければ死んでいただろう』って振り返っています。だから、精神的に強いんですよ。絶対にプレッシャーに負けない。

 今後、テべスがどんなチーム作りをするか楽しみでなりません」

 確かにテべス監督から目が離せない。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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