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W杯優勝の4200万ドル(当時のレートで58億8000万円)が入ったというのに…

林壮一ノンフィクションライター
(写真:ロイター/アフロ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、オーストラリアでプレーするエスクデロ競飛王。

 自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロが、昨年のワールドカップで優勝したにもかかわらず、問題が噴出している祖国のサッカー界について語った。

撮影:筆者
撮影:筆者

 1990年のイタリア大会、2014年ブラジル大会も、決勝まで行ったとはいえ敗れてしまった我が、アルゼンチン代表は、昨年のカタール大会でようやくVを成し遂げました。

 1986年メキシコ大会以来、3度目の優勝でした。優勝賞金は4200万ドル。選手たちにはその分配金が配られたのですが、実は、リオネル・スカローニ監督以下、アシスタントコーチを務めたアイマール、サムエル、アジャラ、フィジカルコーチにも賞金が支払われていないんです。

写真:ロイター/アフロ

 スカローニ監督は45歳と若く、選手の兄貴ぶん的存在で人望も厚い。既に、中東など潤沢な財力のあるチームからオファーがあると聞きます。いい仕事をしても、ギャラが貰えないならやっていられませんよね。

スカローニ監督
スカローニ監督写真:ロイター/アフロ

 そして、最近もアルゼンチン・サッカー協会がシンガポール、香港、ベトナム等との親善試合を要請したんですね。選手は、そんな遠い国に行ってまでプレーしたくないですよ。協会にギャラは入るけど、選手やコーチにどれだけ支払われるか分からない。

 なのに、協会長はスカローニに「もし引き受けないのであれば、代表監督を変えるぞ」と進言しました。

 現在ワールドカップ南米予選で、アルゼンチンは5勝1敗。首位なんです。好調を維持する代表選手たちは、スカローニとやりたがっています。今のところ、世代交代も上手く運んでいます。

 でも、早く未払いの件を解決しないと、皆、やる気がなくなってしまう…。せっかく結果を出したのに、アルゼンチン代表は、深刻な問題を抱えているんですよ。一日も早く解決してもらいたいのですが…。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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