Yahoo!ニュース

WBO暫定ヘビー級王者、張 志磊(ちょうしらい)

林壮一ノンフィクションライター
(写真:ロイター/アフロ)

 2023年9月23日、ロンドンで行われたWBO暫定ヘビー級タイトルマッチは、3回KO勝ちで、王者、張志磊(ちょうしらい)が、ジョー・ジョイスを屠り、ベルトを守った。

 およそ5カ月前、張がジョイスを6ラウンドで下した際、「フロックだ」という声も囁かれたが、前回以上の内容でKO勝利を収めた。これで張は、自身の戦績を25勝(21KO)1敗1分とし、WBO同級正規王者のオレクサンドル・ウシクへの挑戦権を得た。

写真:ロイター/アフロ

 同ファイトをTV観戦した、元世界ヘビー級チャンピオン、ティム・ウィザスプーンにコメントをもらった。

写真:REX/アフロ

 「ジョイスは、サウスポー対策がまるで出来ていなかったな。まず第一に、ジャブの差し合いで、勝てなかった。だからリズムにも乗れないし、ペースを掴むことも出来なかった。

 一方の暫定チャンプは、終始自分の距離で戦い、序盤から得意の左ストレートをヒットして流れをモノにしたね。2ラウンド位で勝負あったな」

写真:ロイター/アフロ

 ティムは続けた。

 「ジョイスはディフェンスの意識が低いよ。自分のパンチを当てる事だけを考えていて、頭の動きがほとんど無い。これでは、相手のパンチをもらっちまう。

 俺はこの試合を目にして、つくづく感じた。きちんとボクシングを教えられる人間が、少な過ぎる。どんな選手にも、打たせないボクシングをさせなきゃ。今のヘビー級は、かなりレベルが低いな…」

写真:ロイター/アフロ

 アジア人初の最重量級王者については、こう話した。

 「オリエンタルだから運動能力が低いとか、そんな事は感じない。やり方次第で、いくらでも強くなると俺は思う。いい指導者に出会って、いかなるトレーニングを積むかが肝心だ。もちろん、教える方は、一人ひとりの選手に適したメニューを作ることが必要不可欠だがな」

 40歳のWBO暫定ヘビー級王者は、更なる高みに上れるか。ウシクとのファイトは、実現するのか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事