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2人のサウスポー世界チャンプが語る「無限の可能性を秘めた中谷潤人、3階級への道」

林壮一ノンフィクションライター
撮影:山口裕朗

 9月18日にアルヒ・コルテス(28)を判定で下してWBOスーパーフライ級タイトルを防衛した中谷潤人(25)。3度ダウンを奪っての圧勝だった。

 今日、10月8日にWBOの総会が行われるドミニカに向かう中谷は、まだ身体が成長中であり、減量という敵もいる。次でスーパーフライ級の統一戦が決まらなければ、バンタム級に転向することになりそうだ。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 今回は中谷と同じサウスポーで、世界の頂点に立った2名にコメントをもらった。

 まずは、18日の一戦を有明アリーナから見守った元世界チャンプ、下田昭文(39)。下田はバンタム級でデビューし、日本、OPBF東洋太平洋、WBAとスーパーバンタム級でタイトルを獲得した男である。現在は、「JR北浦和」駅前でジムを経営し、会員170名と引退後の人生も充実させている。

撮影:筆者
撮影:筆者

 「コルテスはサウスポーが得意という感じじゃなかったですが、接近戦なら手が出そうな選手でした。中谷への距離が遠過ぎた感じがしましたね。気を抜けない相手ではありましたが、中谷潤人が負けるイメージは全く無かったです。

 中谷は凄く強いですよね。5ラウンドに食らった一発は、両足が揃ったところだったように見えました。でも、中谷の勝ちは動かないだろうと思って見ていました。

 彼は今後も勝ち続けて、何階級も制覇していく選手でしょう。敢えて僕が課題を述べるとしたら、今後は、お客さんへのアピールをもう少し意識した戦いをしていくことくらいですかね。ラウンドの終盤に攻勢を強めたり、手数をもうチョイ出して会場を盛り上げるっていう事は、僕もやりました。

 減量がキツイなら、上げたらいいと思います。バンタムでも間違いなく、世界タイトルを手にする選手ですよ。よりスピードも生きるんじゃないですかね」

撮影:筆者
撮影:筆者

 もう一人は元WBOミニマム級王者の谷口将隆(29)だ。

 「中谷選手は、どんな局面に置かれても、それに対応すべく練習しているのでしょう。今回の試合で、僕はそれを感じました。

 圧巻だったのは『このスタイルはやり難いな』と感じた時のアジャスト力です。急に距離を取ったり、緩急を付けたり。コルテス戦も『今日の中谷選手は、ボディー打たへんなぁ』と思っていたら、ボディーブローを放った瞬間に倒しましたよね。

 減量がキツそうでしたが、試合への影響は無いでしょう。それに向けて仕上げていますから。スーパーフライで彼が出せるだけの能力は、完全に出したと僕は見ています。ただ、バンタムに上げた方が、もっと良いパフォーマンスが見られそうですね。身長も体付きも、スーパーフライの身体じゃないですもん。彼のポテンシャルは本当に驚きですよ。

 同じサウスポーということで、中谷選手の戦い振りはずっと参考にさせてもらっています。この防衛戦に向けて、6週間で236ラウンドのスパーリングをこなしたとのことですが、世界戦のリングに上がる日本のトップ選手でも、そんなにやったら壊れますよ。”侍”という言葉が自然に思い浮かぶチャンピオンですね」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 進化を続ける世界チャンピオン、中谷潤人。WBO総会でも、各国のスター王者たちと交流し、刺激を受ける事だろう。更なる飛躍を期待したい。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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