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井上尚弥に屠られた男がIBFバンタム級王者に返り咲き

林壮一ノンフィクションライター
Amanda Westcott/SHOWTIME

 最終ラウンド残り45秒、元IBFバンタム級王者の左ボディアッパーが、ニカラグア人サウスポーを捉える。世界3位の25歳は、堪らずに左膝をついてダウン。カウント9で辛うじて立ち上がるが、ダメージは深刻だった。ファイト再開後、連打からの左フックを浴びて、再びキャンバスに沈む。

Amanda Westcott/SHOWTIME
Amanda Westcott/SHOWTIME

 ここでレフェリーは試合を止めるべきだった。だが、何故か続行と判断する。元チャンピオンは25歳を青コーナーに詰め、更にラッシュをかける。世界3位は、試合終了の5秒前にも片膝をついてカウントを聞いたが、判定まで粘った。

Amanda Westcott/SHOWTIME
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 井上尚弥の返上により、空位となっていたIBFバンタム級タイトル王座決定戦は、同王座に就いていたエマヌエル・ロドリゲスが、メルビン・ロペスを下して、ベルトを奪還した。3名のジャッジそれぞれが、120-105と採点する一方的な内容だった。

Amanda Westcott/SHOWTIME
Amanda Westcott/SHOWTIME

 このファイトの4日前に31歳となったロドリゲスが、2019年5月18日にグラスゴーで井上尚弥に2回KO負けを喫したシーンは記憶に新しい。完膚なきまでに叩きのめされ、"モンスター"との差を思い知らされたロドリゲスが、今回は圧勝で王座に返り咲いた。

Amanda Westcott/SHOWTIME
Amanda Westcott/SHOWTIME

 試合後、ロドリゲスは言った。

 「次は(WBC王者の)アレクサンドロ・サンチアゴとやりたい。彼は『バンタム級で自分を倒せる者などいない』と話したが、俺がここにいる。間違った考えだと分からせてやるぜ」

2019年5月18日、グラスゴーでのファイト
2019年5月18日、グラスゴーでのファイト写真:ロイター/アフロ

 ロドリゲスは非常に良い内容で、自身2度目のIBFバンタム級王者となったが、モンスターとの差は、広がるばかりだ。改めて井上尚弥の存在の大きさを感じさせる一戦であった。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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