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再起戦に己を賭ける前WBOチャンプ

林壮一ノンフィクションライター
撮影:筆者

 今年初めにWBOミニマム級王者から転落した谷口将隆が、8月5日に再起戦のリングに上がる。対戦相手は日本ライトフライ級9位の堀川謙一。階級を上げる事を決めた谷口にとって、ライトフライ級での初戦となる。

撮影:筆者
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 この数日の間に、階級を上げて成功した2人の名チャンピオンの戦い振りを目にした谷口は、かなりの刺激を受けたようだ。

撮影:筆者
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 「一人目は、7月25日の井上尚弥選手です。モンスターが溌溂としていましたよね。足の動き、距離の取り方、瞬間瞬間の攻撃力、全てにおいて階級を上げたことがプラスに運んでいることを感じました。減量苦から解放された伸び伸び感が見えましたよ。僕の目にはバンタムの時よりも遥かに良いパフォーマンスに映りました。パンチ力も更に磨かれた印象です。

写真:松尾/アフロスポーツ

 彼の姿から、生き生きと試合を迎えることが大切なんだと教えられた気がします。自分はミニマム時代も今も体脂肪率は4パーセントくらいで、それほど変わりはしないのですが、1.3kgの差は大きく、減量の最後に絞り出す作業が少しだけ楽になるので、多少伸び伸びできるんじゃないかと思っています。もちろん不安もありますが、ワクワクする思いが強いです」

撮影:筆者
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 そして、もう一人は現地時間29日にラスベガスでウエルター級4冠統一を成し遂げたテレンス・クロフォードである。

Esther Lin/SHOWTIME
Esther Lin/SHOWTIME

 「あれはもうイカれていますよ(笑)。序盤からエロール・スペンス・ジュニアに無理やり手を出させて、精度の高いリターンジャブや、左からの右フォローを的確に当てていました。

 次元が違います。ジャブでスペンスの腰を落としましたが、タイミングもドンピシャだし、モーションも無いですし、見えなかったでしょうね。右とディフェンスの精度は、とても勉強になりました」

撮影:筆者
撮影:筆者

 谷口は今回、160ラウンド強のスパーリングをこなした。

 「今まで通りの練習をこなしましたが、1.3Kg分の減量がなくなるので、僕も肩の力を抜いて、気持ちに余裕を持ってリングに上がります」

撮影:筆者
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 悪夢のKO負けから7カ月。

 「メルビン・ジェルサレムにKOされるとしても、あくまでも連打であって、一発でやられるとは全く想定していなかったんです。<パンチがあるから警戒しなければ>という気持ちが、頭の片隅にも無かった。そこが敗因ですね」

 と話していた谷口は、あの試合から何を学んだか。5日のリングで何を見せるか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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