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18戦全勝12KOでWBCライト級挑戦者決定戦に勝利したサウスポー

林壮一ノンフィクションライター
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 WBCライト級挑戦者決定戦として行われた5位のフランク・マーティンと、8位のアルテム・ハルティウニアンとの一戦は、まさにサバイバルだった。

 試合開始時点でマーティンは17戦全勝12KO、ハルティウニアンは12戦全勝7KO。プロデビュー以来連勝街道を走る者同士のぶつかり合いは、実に見応えがあった。

Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 先手を取ったのは、リオ五輪で銅メダリストとなったハルティウニアン。米国に見参した8位は敵地であることを十二分に認識しており、序盤から激しいプレッシャーをかける。マーティンもカウンターを狙って応戦するが、ペースを握ったのはアルメニア出身のドイツ人だった。

 実際、6ラウンドまでの採点は、全てのジャッジが58-56で、8位優勢としていた。

Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 だが、マーティンは強靭なハートを武器に、粘りを見せる。トレーナーのデリック・ジェームズから「ダウンを奪え!」と発破をかけられて奮起。ひたすら前に出て、手数で上回る。

 第11ラウンド終了間際には、細かなコンビネーションから右フックを見舞って、ハルティウニアンをダウン寸前にまで追い込んだ。そして最終ラウンド、左目が塞がったハルティウニアンを追い、左右の連打を放って8位に膝をつかせる。

Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 プロ転向後、ハルティウニアンがダウンを喫するのは初めてのことであった。このダウンが明暗を分け、114-113、115-112、115-112の僅差で5位が勝利を掴んだ。

 サバイバルを制したマーティンは言った。

 「ダウンは特に驚くものじゃなかった。ボディーを何発も打っているうちに、ハルティウニアンはダメージを蓄積させていったからね。俺も、いつもの試合程はボディーを打たなかったしさ」

Stephanie Trapp/SHOWTIME
Stephanie Trapp/SHOWTIME

 WBA/WBC/IBFウエルターチャンピオンのエロール・スペンス・ジュニアと共にデリック・ジェームズの指導を受け、合同キャンプを張って試合を迎えたマーティン。この勝利は、"スペンス効果"と呼んでいいかもしれない。苦しみを乗り越え、一皮むけた感がある。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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