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故郷で統一スーパーミドル級タイトルを防衛したカネロ

林壮一ノンフィクションライター
日本製「ミズノ」のリングシューズを愛用するチャンピオン(写真:ロイター/アフロ)

 祖国の千両役者に酔いしれたーーー。メキシコ、グアダラハラは、地元出身のヒーローの登場をおよそ12年間待ち続けていた。

 プロサッカークラブ「チーバス」のホームであるアクロン・スタジアムに無数の花火が打ち上げられ、5万1000人強の観衆が、花道を歩くWBA/WBC/IBF/WBOスーパーミドル級王者に向かって彼の名を叫ぶ。

写真:ロイター/アフロ

 そばかすが目立つ、赤毛のあどけない少年だったサウル・アルバレスが、"カネロ"としてボクシング界を代表する存在に成長した。2023年5月6日、アルバレスは文字通り、故郷に錦を飾った。自らの原点である街に、彼は統一王者として凱旋したのだ。

 ジョン・ライダーもWBA、WBOの同級暫定王座を獲得したことがあり、弱いチャレンジャーではない筈だったが、カネロの相手ではなかった。

写真:ロイター/アフロ

 第5ラウンドにダウンを奪ったカネロは、9ラウンドにも挑戦者を追い詰め、120-107、118-109、118-109とワンサイドの判定で4冠王座を防衛した。

写真:ロイター/アフロ

 顔面を血で染めながら試合終了まで持ち堪えたライダーは話した。

 「カネロはノックアウトを狙っていたが、果たせなかった。何故かと言えば、彼がピークを過ぎているからだ」

 確かに、カネロはKO勝ちを逃した。あるいは少しでも長い時間、ファンの前で自らの戦いを見せたかったのかもしれない。

写真:ロイター/アフロ

 スターとなってからのカネロは、米国、それも多くがラスベガスのリングで自身のサクセスストーリーを彩ってきた。統一スーパーミドル級チャンピオンは語った。

 「俺にとって歴史的なファイトだよ。グリーンボーイだった自分を支えてくれた仲間たちと一緒に、この場所にいられることを嬉しく思う。自分がここにいることにとても感謝しているし、私の仲間たちにもお礼を言いたい」

カネロはビボルにリベンジできるか
カネロはビボルにリベンジできるか写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 59勝(39KO)2敗2分となったカネロは、1年前に判定負けを喫したWBAライトヘビー級チャンプのディミトリー・ビボルとの再戦を希望。相手が誰であれ、カネロの次戦は9月16日に行われることが内定している。無論、カネロがビボルと戦う場合、168パウンドのスーパーミドル級ではなく、175パウンドのライトヘビー級になる。

 今回、同胞たちの前で快勝したカネロだが、メキシコ独立記念日は更なる狂喜を齎すことが出来るか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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