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54歳の元パウンド・フォー・パウンドのカムバック戦

林壮一ノンフィクションライター
Phil Lambert/Gamebred Boxing

 かつてのパウンド・フォー・パウンド、ロイ・ジョーンズ・ジュニア(54)とUFCのリングで活躍するアンソニー・ペティス(36)とのクルーザー級8回戦が終了した。同ファイトはウィスコンシン州ミルウォーキーに建てられたフィサーブ・フォーラムからPPVでライブ中継された。

Phil Lambert/Gamebred Boxing
Phil Lambert/Gamebred Boxing

 ミルウォーキー出身でプロボクシングデビューとなったペティスは、地元ファンの大声援に後押しされる。百戦錬磨のジョーンズは、経験というアドバンテージを持ってはいたが、やはり年齢には勝てなかった。局面局面では、ペティスを圧倒し、一進一退の攻防を繰り広げた感もあったが、全盛期に比べればスローモーションのような動きだった。

 ただ、54歳でこれだけ動ける、という矜持は見せたような気がする…。

Phil Lambert/Gamebred Boxing
Phil Lambert/Gamebred Boxing

 78-74、77-75、76-76のスコアで、ペティスが勝者となった。試合後、勝者は言った。

 「54歳のロイに敬意を表するべきだ。彼はスポーツ界のレジェンドであり、GOAT(Greatest Of All Time)。この機会を与えてくれた神に感謝する。皆さんも、ロイ・ジョーンズ・ジュニアに拍手を贈ってほしい」

 そしてボクサーとしての現役続行も示唆した。

 「一戦一戦、一日一日を大切にしたい。これでプロとして1勝0敗。今後、どうなるかワクワクするね」

Phil Lambert/Gamebred Boxing
Phil Lambert/Gamebred Boxing

 黒星が一つ増え、66勝(47KO)10敗となったジョーンズも語った。

 「俺は、ファンを楽しませるのが好きなんだ。自分の仕事は、ファンがお金を払ってくれて成立する。それでいいと思っているよ。

 いい試合だったと思う。彼は素晴らしい仕事をしたし、とてもスマートな戦い方だった。俺は試合を通して彼に対して多くを教えたと思う。だから、もしまた彼と戦える機会があれば、よりレッスンしてあげられるよ。それによって彼はもっと上達するさ。リターンマッチが実現したら、見応えのあるファイトになるだろうよ。

 俺はエキシビションではなく、本物のファイトをする。エキシビションで満足できる男じゃないんだ。本物だから勝ちたい。負けることもあるけれどね。俺は世の中の人の盾となって、人生は何度でもやり直せる、チャレンジできるって事を示したい。54歳でそれを見せられるのは美しいことだ。一人のジャッジが引き分けと採点したから、ペティスも再戦すると言ったよな。そういう真剣勝負が好きなんだよ」

Phil Lambert/Gamebred Boxing
Phil Lambert/Gamebred Boxing

 確かにペティスも「またやりたい。やろうぜ!光栄だよ」と締め括った。

 ロイ・ジョーンズ・ジュニアは、まだ戦い続けるのか……。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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