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92歳のドン・キングが仕掛けるフロリダでの興行

林壮一ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Chris Belser/Behind the Boxer Magazine

 92歳のプロモーター、ドン・キング。彼は、現在居を構えるフロリダ州フォートローダーデールで、次のように捲し立てた。

 「我々は、本物のファンの元にボクシングを戻す。だから今、非常に興奮している。同時に、心から喜びを感じている。6月7日はこれ以上ないエキサイティングな夜になる。エイドリアン・ブローナーがリングに上がる。彼は問題児だが、それは私も同じこと」

 昔ほど頻繁に興行を打つことはなくなったが、それでもやはり、キングにはバイタリティーがある。

 「ファイターのほとんどが、何かを語るよりも戦うことに長けている。戦士っていうのは、そういうもんだ。ボクサーはダメージを被るビジネスに携わっている。でも、彼らは大丈夫。椅子に座って泣くことなどない。これは人を傷つけるビジネスだが、私たちは今得たカードで対応する」

 ”得たカード”という表現が、キングの持ち駒に対する思いを示している。この男はずっと支配下に置くファイターから搾取を続け、泣かせてきた。犠牲になった選手は数え切れない。

Chris Belser/Behind the Boxer Magazine
Chris Belser/Behind the Boxer Magazine

 今回、キングが興行のメインとするのがWBOスーパーフェザー、WBCライト、WBAウエルター、WBAスーパーライトと4階級を制したエイドリアン・ブローナーである。35勝(24KO)4敗1分けで34歳の元王者にとっては、プロ41戦目のリングとなる。

Chris Belser/Behind the Boxer Magazine
Chris Belser/Behind the Boxer Magazine

 6月7日の金曜日、当地のハードロック・ホテル&カジノで16勝(10KO)1敗1分けのブレア・コブスと対戦するブローナーは言った。

 「皆、このピエロたちを見てくれ。ピエロたちは誰もリングじゃいい働きが出来ない。機能しない。人々は俺をピエロだと言うが、自分は別のタイプだぜ。

 コブスはサーカスの道化師で、俺は恐ろしいピエロだ。誰もが俺のことを話すと怖気づくだろう。6月7日は見に来てほしい。ヤツが何をするかについて、俺が言うことは何もない。あの男を壊してやるさ。

 試合当日は、コブスにとって人生最後の日だ。俺はラスベガスで良いトレーニングをしている。弟分のタンク(ジャーボンテイ・デービス)と一緒にキャンプ中だ。多くの人は俺が試合をすることを疑問視していたが、最高のコンディションだし、ゴングが待ち切れないよ。素晴らしいパフォーマンスをしてみせる。ドン、金を稼ごうぜ」

Chris Belser/Behind the Boxer Magazine
Chris Belser/Behind the Boxer Magazine

 ブローナーの相手に選ばれた、コブスも話した。

 「私以上にボクシング界で最もエキサイティングな男はいない。かつてないほどに輝いてみせるぜ。

 ファンは、これまで見たことのない結末を目の当たりにする。皆さんにアクション満載のパフォーマンスをご覧に入れるよ。私はこの試合のために生まれてきた。ずっと、チャンスを待っていた。ついに、来るべき日が訪れるんだ」

 フロリダは盛り上がるか。

ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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