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12戦全勝9KOを誇ったヘビー級が崩れてしまった……

林壮一ノンフィクションライター
Stephanie Trapp/TGB Promotions

 2021年1月30日、11戦全勝8KOだったマイケル・コフィーは、17戦全勝12KOのダーマ二・ロックとの無敗対決を制した。3回ノックアウト勝ちを飾り、更に階段を上がったかに見えた。

 戦績を評価されたコフィーは、同年7月31日にFOXのメインイベンターとして、13勝(9KO)6敗1分けのジョニー・ライズを迎える。この時、FOXはライズを咬ませ犬として扱っていた。

 ところが初回からコフィーはライズの右ストレートを再三浴び、リズムに乗れない。ジャブの刺し合いでも負け、ベタ足でリングを動く姿に疑問符が付けられた。2回、苦し紛れにサウスポーにスイッチしたコフィーだが効果は無く、更に右ストレートを喰らう。

 全くいいところのないまま、苦悶の表情を浮かべるコフィーを5ラウンドにレフェリーが救い、TKO負けを喫する。5カ月後のダイレクト・リマッチでも判定負けした。

Stephanie Trapp/TGB Promotions
Stephanie Trapp/TGB Promotions

 そのコフィーは、2022年7月30日にコロンビアに遠征し13勝目を挙げる。10月15日には3戦全勝オールKOのアルメニア人、グーゲン・ハネシアンとのリングに上がった。

 復活を誓った36歳のコフィーと、24歳のハネシアンには大きな差があった。コフィーはアルメニア人の攻撃を躱せず、パンチも体重が乗らない。ジャブもヒットせず、相変わらずスイッチを繰り返すが、ポイントを稼ぐには至らない。

Stephanie Trapp/TGB Promotions
Stephanie Trapp/TGB Promotions

 時折フルスイングも見せはしたが、如何せん距離が遠過ぎて獲物を捕らえられない。何よりも反射神経が鈍く、コフィーの動きが緩慢だった。

 結局第6ラウンド終了時にレフェリーが試合を止めた。

 最盛期は12戦全勝9KOを誇ったコフィーだが、壊れてしまったのは誰の目にも明らかだ。これ以上現役を続けるのは危険である。

 連戦連勝だったファイターが呆気なく崩れる姿を目に、ボクシングの怖さを感じた。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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