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9月10日の試合を控えたWBA/WBC/IBF統一ミドル級王者

林壮一ノンフィクションライター
Adam J. Dewey / Salita Promotions

 9月10日にWBO同級王者のサバンナー・マーシャル(31)との統一戦を迎えるWBA/WBC/IBF統一ミドル級王者、クラッサ・シールド(27)。刻一刻と迫る大一番を前に調整に余念がない。

 ロンドン、リオと五輪2大会連続で金メダルを獲得し、プロ転向後もスーパーミドル、ミドル、ライトミドルの3階級を制したシールドは、今日の女子ボクシング界において第一人者だ。目下の戦績は12戦全勝(2KO)。アマ時代に唯一の黒星を喫した相手がマーシャルであり、これ以上ない舞台でのリベンジを誓っている。(シールドのアマ戦績は64勝5KO1敗)。

Adam J. Dewey / Salita Promotions
Adam J. Dewey / Salita Promotions

 先日、シールドは練習を公開し、メディアの質問に応じた。

 「私は昨日よりベターな自分でありたいと常に考えている。(2012年に敗れた)マーシャルよりは、優秀なファイターよ。ゴールドメダル、世界のベルトと既に大きな成功を成し遂げた。確かにマーシャルは良い選手。一つベルトを巻いているしね。でも、私はこれまでに12のタイトルを手に入れた。

 トレーニング中にマーシャルについて思いを巡らすことなんて無い。作戦は立てているけれど。ただただ、昨日よりも成長した自分でありたいって思うだけね。

 アマ時代に私は1敗したけれど、プロでは負け知らず。彼女に負けてから、もう10年が過ぎた。14-8の6ポイント差だったわ。でも、特にその敗北に自分が苦しめられたりはしなかった。気にしてもいない。だからこそ、数々の功績を打ち立てられたの。

 マーシャルは私との試合後も、色んなトーナメントで負けているわ。私が金メダルを獲得したオリンピックでもね。アマで負けはしたけれど、プロでこうして勝ち続け、自分の物語が進行している。私は、歴史に名を刻むことになるでしょう。

Adam J. Dewey / Salita Promotions
Adam J. Dewey / Salita Promotions

 マーシャルも私もお互いを嫌い合っている。試合が待ちきれないわ。私は故郷であるミシガン州フリントに大きな影響を与えている。アメリカの黒人女性でボクシングをやりたい子には特にね。その点が誇りだわ。だからこそ、勝ち続ける。自信も持っている。

 ボクシングに物凄い情熱を感じているし、対戦相手との挑発的な言葉のやり取りも愛している。これも、試合を盛り上げるための一つの策よ。私は今や億万長者。望むことを実行できる。若い女の子たちに、そんな姿を見せたいわね。

 ボクシングを離れた時、どこまで出来るか分からないけれど、可能な限りフリントの子供を助けたいと思う。この数週間で100名から150名の子供と触れ合う時間を持った。多くの子が将来を案じ、自信を失っていた。そういうタイプの子との出会いを作ってくれた親御さんに感謝しているわ。

Adam J. Dewey / Salita Promotions
Adam J. Dewey / Salita Promotions

 今回のトレーニングキャンプは、ミシガンで6週間、加えてフロリダでも5週間こなす予定なの。マーシャルはパンチがあるから、備えなきゃね。私、フロリダでのトレーニング好きなのよ。家族や友人と離れて気晴らしの無い状況で自分を追い込む。試合前には、そういう日々も重要だわ。

 マーシャルは試合決定の記者会見以来、沈黙を守っているわね。彼女はより私に対して嫌悪感を抱き、活力を漲らせているんじゃないかしら。でも、フェイスオフで私と顔を近づけた折、本当は戦いたくないと感じた筈よ。この試合に勝てないって理解しただろうから。

 ある彼女のインタビュー映像を目にしたんだけれど、目に青あざができていた。スパーリングで作ったんでしょう。私に追いつくには光年かかるわよ。

Adam J. Dewey / Salita Promotions
Adam J. Dewey / Salita Promotions

 マーシャルは12戦全勝10KOだけど、ほとんどの相手が負けてばかりって選手。トマト缶の束と戦っただけでしょう。

 私と拳を交えたら、彼女たちと同じようにはいかない。マーシャルに統一戦の経験は無いけれど、こちらは3度目。ファンは私たちの罵り合いが見たいようだし、マーシャルもリングでそうしたいでしょう。でも、私はより優秀に、より速く、より強く、より鋭く、そしてより賢く戦えるようにトレーニングしているのよ」

 さて、英国での女子最強を決めるファイトはどんな展開となるか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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