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再起を飾れなかったメキシカンファイター

林壮一ノンフィクションライター
Photo:Kate Frese/HBSE

 FOXが売り出すヴィト・ミエルニッキに3回KOで敗れたメキシカン、ノエ・ロペス(35)が先日、再起戦のリングに上がった。2021年2月27日以来、10カ月ぶりのファイトであった。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20210310-00225687

 10勝(4KO)4敗1分けで、目下2連敗中のロペスにとっては、年齢的にも後が無い状態。生き残りをかけた相手は、21勝(15KO)3敗1分けの41歳、マイケル・アンダーソンだった。

Photo:Kate Frese/HBSE
Photo:Kate Frese/HBSE

 ロペスが6歳の年の差を見せるか……と思われたが、蓄積されたダメージは予想以上に深刻だった。終始、後手に回り、アンダーソンのジャブを浴びてはバランスを崩した。

 第3ラウンドに2度のダウンを喫したロペスは、同ラウンド33秒で敗者となる。

 祖国、メキシコからテキサス州に移住し、2015年よりプロボクサーとして生きてきたロペスだが、これ以上現役生活を続けるのは危険である。

Photo:Kate Frese/HBSE
Photo:Kate Frese/HBSE

 とはいえ、ボクシングしか知らずに生きてきたが故に、他に食う方法を知らず、ダメージを蓄積させながらリングにしがみつくファイターも数え切れない。プロモーターたちも、この種の選手を自身が抱えるファイターの踏み台として使いたがる。それが現実だ。

 このままロペスが現役を続けた場合、哀しいかな咬ませ犬としての役割を担う他ないように映る。

 愛する家族の顔が刻まれたTATTOOが、父としての彼を物語っているようで、胸が痛んだ。リングを降りた後、ロペスは母国に戻るのか、あるいは合衆国で新たな道を探すのか……。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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