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逮捕されたWBCミドル級王者

林壮一ノンフィクションライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 現地時間2月11日金曜日の13時29分、WBCミドル級チャンピオンのジャーモール・チャーロ(31)が逮捕された。容疑は家族への暴行。立件されていた同ケースの有罪が確定し、テキサス州リッチモンドのフォートベンド裁判所が逮捕状を発行した。

 11日夜、ジャーモール・チャーロは拘留されている。保釈金は1万ドルと報じられた。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 この選手の戦績は目下32戦全勝22KOで、IBFスーパーウエルター級のベルトと合わせて2階級を制覇している。スポーツチャンネルのESPNからはミドル級最強とも評価される。

 WBCミドル級王者は、7カ月前の2021年7月16日にも手錠を掛けられた。双子の弟であるジャーメルの統一スーパーウエルター級タイトルマッチの前夜、複数の仲間とバーに繰り出し、クレジットカードで支払いを済ませようとするもカードが機能せず。この事態に我を失ったWBCミドル級王者は、バーの従業員に暴行を働き、金を奪った容疑が掛けられていた。

 今月頭に、同件は原告の主張が棄却され、チャーロにお咎め無しとの判決が下ったが、またリング外での醜聞で注目を集めることとなった。

双子の弟を労うWBCミドル級王者(右)
双子の弟を労うWBCミドル級王者(右)

 アメリカ合衆国において、2月とは「Black History Month」である。アフリカから奴隷船に積み込まれて強制的に運ばれてきた人々が、いかに過酷な生活を強いられ、それを乗り越えたのか。マーティン・ルーサー・キング・ジュニアやマルコムX、リンカーン大統領らの足跡を再確認し、黒人の人権を社会全体で考えようという動きである。

 その折、有色人種初のメジャーリーガーであるジャッキー・ロビンソンと共に黒人アスリートの代表として必ず名前が挙がるのが、モハメド・アリだ。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 チャーロにも言い分があるだろう。しかし、黒人ボクサーが世間から愛されるようにと奮闘したアリのバトンをきちんと継承しなければ、名チャンプには決してなれない。

写真:Shutterstock/アフロ

 アメリカ時間の13日にはスーパーボウルが開催される。NFLやNBAでプレーする多くのブラックアスリートたちが黒い肌にまつわる先人の功績を語るなかでの逮捕劇は、マイナスでしかない。残念ながらこの男は、自身の器を示してしまったようだ。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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