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世界7位が望む2冠戦

林壮一ノンフィクションライター
撮影:山口裕朗

 2021年11月12日に行われたWBOアジアパシフィックタイトル空位決定戦で、重岡優大は小浦翼を2-0の判定で下し、実弟である銀次朗が8月に返上したベルトを獲得した。優大にとってプロ転向後、4戦目のファイトだった。現在、WBCミニマム級7位、WBO11位にランクされる。

 しばしの休息の後、次に向けて走り始めた優大は言う。

 「前回は、正直、勝って当たり前の試合だと思っていました。KOしたかったし、完勝したかったです。それが2-0という結果で、自分としてはショックでしたね……。

 小浦がどうのこうのと言うよりも、相手陣営の声ばかりが耳に入ってしまって、気になって仕方なかったんです。『ホールド!』とか『効いているぞ!!』とか。『うるせえなぁ』と思ってしまって、集中力が削がれていました。逆に自分のコーナーの声はほとんど聞こえませんでした。対応出来なかったのは、自分の力不足です」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 優大は大学時代にも、ロシアで行われた国際大会の決勝で同じような経験をしている。

 「世界大学選手権だったと記憶していますが、ロシア人選手との決勝戦でした。当たってもいないのに、相手がパンチを出すと会場が異様に盛り上がって……その雰囲気に呑まれて負けてしまったんですよ。小浦戦も、ちょっと似たような感じでしたね。

 ただ、12ラウンド、フルに戦えたことは自信になりました。スタミナはまったく問題なかったですし、終盤の10、11、12回とポイントを取れましたので。反省点を生かして、次の試合はスカッと勝ちます」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 2021年12月14日、ジムの先輩であり、何度もスパーリングを重ねている谷口将隆が、同じ階級でWBOタイトルを獲得した。

 「素晴らしい勝利でした。やっぱり刺激になります。谷口さんは人間的にも好きな先輩です。ライバル視するようなことは特にありませんね。

 谷口さんと戦ったウィルフレド・メンデスはサウスポーで、僕と噛み合いそうだなと思いながら見ていました」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 一足先にプロの世界に飛び込んだ2歳下の弟、銀次朗も同じミニマム級であり、目下WBO3位、WBC4位、WBA5位、IBF7位にランクインし、世界タイトル挑戦を虎視眈々と狙っている。

 「弟には早く世界チャンピオンになってもらいたいですね。誰と比較するわけでもなく、自分が強くなって世界を獲るんだ! ということだけ考えています。

 今の課題は筋力の量を増やして、フィジカル面を鍛えることです。リードパンチも、もっとレベルアップしなければ。色んな映像を見て研究しています。大晦日の井岡一翔さんの試合からも、学ぶところがありました。ガードとガードの隙間を打っていましたよね。自分もやってみますよ」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 まだ、自身の第5戦は決まっていない。それについて質すと、優大は言った。

 「先日、日本ミニマム級チャンピオンになった石澤開と是非やりたいですね。僕の持つWBOアジアパシフィックタイトルと彼の日本タイトルを懸け、統一戦なんて面白いじゃないですか。

 石澤は谷口さんと戦って負けているので、リベンジしたいらしいですが、まだ早いですよ。それを思い知らせてやりたいです」

 東京オリンピックに出場してからプロ入りする青写真を描いていたが、ライトフライ級が五輪から外されたため、大学を4年で中退して世界王座を目指すことに決めた優大。2022年に何を見せるか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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