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不可解なレフェリーによってドローとなった6回戦

林壮一ノンフィクションライター
(C)Sean Michael Ham / PBC 黒いキャップがヘスース

 9月18日にFOX TVが放送した興行のセミファイナルは、3戦全勝(2KO)のエロン・デ・ヘスースと5戦全勝5KOのレジョン・チャンスが対戦し、引き分けた。このスーパーバンタム級6回戦のレフェリングは、理解し難いものだった。

 第4ラウンド、1分33秒。ヘスースの狙い澄ました右ストレートが顎を捉え、チャンスがダウン。膝を折り、キャンバスに手を付いたチャンスの後ろ首に、勢い余ったヘスースのパンチが当たる。

(C)Sean Michael Ham / PBC
(C)Sean Michael Ham / PBC

 するとレフェリーのジェリー・カントゥはダウンを取らずに、ヘスースに減点を告げる。

(C)Sean Michael Ham / PBC
(C)Sean Michael Ham / PBC

 翌5ラウンド、偶然のバッティングにより、試合が一瞬止まる。しかし、レフェリーはタイムブレイクにはしなかった。ヘスースがパンチを振るうと、2人の間に入ってレフェリーがチャンスを救う。

 極めつけは同ラウンドの1分37秒。ヘスースの右アッパーを顎にクリーンヒットされたチャンスがダウン。カウント8でかろうじてファイティングポーズをとり、試合続行を主張しながらも、チャンスは「目が見えない」とアピール。するとレフェリーはドクターをリングに上げ、チャンスを診断させた。

(C)Sean Michael Ham / PBC ヘスースの次に期待したい
(C)Sean Michael Ham / PBC ヘスースの次に期待したい

 選手のダメージを考慮するなら、TKO負けを宣言するのがレフェリーの仕事であろう。チャンスがダメージを回復させるために時間稼ぎをし、レフェリーがそれに加担したのは明らかだった。

 レフェリー、ジェリー・カントゥの奇妙な働きによって、同ファイトはドローとなる。ジャッジの採点は、56-56、56-56が2名、残る1名は57-55でチャンス優勢としていた。

 後味の悪さだけが残る試合となった。勝利を盗まれたヘスースは、腐ることなく次戦で悔しさをぶつけてほしい。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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