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元WBAバンタム級王者「6年越しのKO勝ち」

林壮一ノンフィクションライター
(C)Sean Michael Ham/PBC

 WBOバンタム級タイトルマッチ、ジョン・リール・カシメロvs.ギジェルモ・リゴンドー戦の前座に登場したルーシー・ウォーレンの動きは、冴えわたっていた。ステップが鋭く、速い。一発一発のパンチにも切れがある。表情にも自信が漲る。

 過去にWBAバンタム級スーパー王座に就いたものの、初防衛に失敗。試合時点での戦績は、18勝3敗。18勝のうち、KO勝ちは4。

 (C)Sean Michael Ham/PBC
(C)Sean Michael Ham/PBC

 そのウォーレンが、34歳にして化けた。

 オープニングベルから、ウォーレンはノックアウトを狙っていた。フリッカーにして、右ジャブ以上にフックを狙う。

 スタートダッシュに成功したサウスポーは、初回に2度のダウンを奪い、翌第2ラウンドで仕留めた。

 「変化した俺を見せたかった。自分にはパワーもスピードもあるが、今回のキャンプはメニューを変えたんだ。座ってパンチを出すトレーニングを取り入れたりとかね」

 (C)Sean Michael Ham/PBC
(C)Sean Michael Ham/PBC

 8試合ぶりのKO勝ちに、ウォーレンは満面の笑みを浮かべた。彼の前回のノックアウト勝利は2015年3月6日のことだ。アテネ、北京、ロンドンと3度の五輪を経験しながらも、プロ転向後はファン・カルロス・パヤノに1勝1敗と、なかなか存在感を示せずにいた。が、8月14日の彼は違った。

 (C)Sean Michael Ham/PBC
(C)Sean Michael Ham/PBC

 試合直後のリングで、「次はタイトルマッチだ! 俺はWBAの1位。この位置に押し上げてくれたチームの皆に感謝する。彼らは俺がどんなファイターであるかを理解している。必ずもう一度世界チャンプになる。次でタイトルを奪取してみせる。誰とでも戦う」と語ったウォーレンは、メインイベントの勝者への挑戦を希望した。

オハイオ州シンシナティー出身のLegend、故アーロン・プライアー
オハイオ州シンシナティー出身のLegend、故アーロン・プライアー写真:Shutterstock/アフロ

 ウォーレンは、オハイオ州シンシナティーの出身だ。17歳でアテネ五輪に出場する前から、地元では評判の選手だった。2016年10月に鬼籍に入った伝説のチャンピオン、アーロン・プライアーからも、その名を聞いた覚えがある。

 十数年前、私はプライアーをインタビューする為に、シンシナティーに通っていた(※プライアーについて詳しく知りたい方は、是非、拙著『神様のリング』(講談社)をお読みください)。彼の口から発せられたファイターの活躍は、胸を熱くさせる。

 ウォーレンの次戦に期待したい。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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