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WBCヘビー級タイトルマッチ「タイソン・フューリーvs.デオンテイ・ワイルダー第3戦」前の両者の言葉

林壮一ノンフィクションライター
Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions

 WBCヘビー級チャンピオンのタイソン・フューリーと、前王者のデオンテイ・ワイルダーが、7月24日にラスベガスで対戦する。両者のファイトは3度目だ。フューリーの1勝1分け。

 現地時間6月15日に、ロスアンジェルスで記者会見が行われた。両者の言葉をお届けしよう。

Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions
Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions

 当初、WBA/IBF/WBO同級王者、アンソニー・ジョシュアとの統一戦に向かっていたチャンピオン、フューリーは語った。

 「今回の試合は、狂ったジェットコースターのように決まった。俺は常に、対戦相手以外と戦う気は無いと言っている。またワイルダー戦になったんで、気持ちを切り替えないとな。

 モチベーションを上げてトレーニングする必要がある。こうして生きていることを幸せに感じているから、今を大事にしたいね」

写真:ロイター/アフロ

 「デオンテイは前回とは違うモノ、変化を見せてほしい。新しいトレーナーが、そうしてやれるといいんだが。前回の敗戦で、ヤツは肉体的にも精神的にもダメージを負ったな。人生にも心理的な影響を及ぼしてしまっている。俺が叩きのめしたことが原因だから、心配しているんだよ。

 ワイルダーがワンパンチでKOすることが出来るハードパンチャーであることは認めるが、こちらは自分の距離で戦うからね。今回もKOを狙っていくよ。ヤツは前回の試合前、殺戮を見せるなんて発言していたが、どうなったかは誰もが知っているよな」

Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions
Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions

 一方、挑戦者となったワイルダーも言った。

 「今回は、あらゆる面で前回のフューリー戦(2020年2月22日)とは違う。全世界が7月24日に行われる流血の惨事を目にすることになる。全てが明確になるんだ。是非、直ぐにでもチケットを購入してくれ。会場で会おうじゃないか。

 フューリーが他の試合を実現させるために交渉していたことには、関心が無い。今回、俺たちが戦うのが現実だから」

写真:ロイター/アフロ

 「昨年2月の試合後、家族と共にとてもハッピーな時間を過ごせた。俺は若返ったよ。試合に向けて万全を期している。パンデミックの間も、自分を作り上げるべくトレーニングは続けていた。この期間は俺にとってはプラスに、フューリーにとってはマイナスに運ぶだろう。

 7月24日に結果が出る。今、とてもハードに練習しているし、非常に感情が高ぶっている。早くリングに上がりたいぜ」

前回は7ラウンドで決着がついた
前回は7ラウンドで決着がついた写真:ロイター/アフロ

 ワイルダーの名を聞く度に思い出すのは、「40パウンド(18.14kg)もあったコスチュームが重過ぎて、足が動かなくなった」という前回の敗北後のコメントだ。彼はこの発言で、人間としての器を示してしまった。

写真:ロイター/アフロ

 アスレティックトレーナーを目指してオレゴン州立大学に通う学生は、心理学を履修すしなければならない。過去にテキストとして使われた『Advances in Sport Psychology』には、小学4年生から6年生に対して「スポーツマンシップとは何か?」と問い掛けた答えが記載されている。そのなかに「負けた時にいい訳をしないこと」という回答がある。

 ワイルダーは世界ヘビー級王座に就きながらも、小学生ですら理解できる筈のことが分からないのだ。

 力の限り戦って敗れた井上尚弥戦時のノニト・ドネアのような美しさがワイルダーには無い。仮にヘビー級王座に返り咲けたとしても、この男にボクシング界は背負えない。

 今回は、言い訳をしない戦いをみせてくれ。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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