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スーダン難民からNBA選手へとなったペリカンズの背番号32

林壮一ノンフィクションライター
ポートランドからニューオーリンズに移籍したガブリエル(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 昨シーズン、プレイオフを含めてNBA公式戦34試合でプレーしたウェイン・ガブリエル(23)が、ニューオーリンズ・ペリカンズの選手として、古巣を訪れた。

 が、16日、18日のポートランド・トレイルブレイザーズとの連戦で出場機会は無かった。

昨シーズンのガブリエル
昨シーズンのガブリエル写真:代表撮影/USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 2020年11月30日、身長206センチ、体重93キロのパワーフォワードはペリカンズと年俸162万ドルで契約を交わしたが、今シーズンは5試合でコートに立っただけである。平均プレー時間は3.4秒。

 今月4日には、Gリーグのエリー・ベイホークス行きを命じられ、オールスター明けに再度ペリカンズに呼び戻された。

昨季のプレイオフの1枚。2020年8月20日
昨季のプレイオフの1枚。2020年8月20日写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 ガブリエルは1997年3月26日、スーダンの首都ハルツームで生を享けた。母国の内戦から逃れるために、生後2週間で3人のきょうだいと共にエジプトに渡る。およそ2年後、国連による難民支援の一環で、ガブリエル一家は英国を経由して米国ニューハンプシャー州に逃れた。

 3歳でアメリカの地を踏んだガブリエルは、10歳でバスケットボールと出会う。そして、未来を創ろうと心に決め、翌年から本気でNBA選手を目指した。

 高校時代はニューハンプシャー州を代表する選手となり、最終学年時にアメリカ国籍を取得。そしてケンタッキー大に進学した。

大学時代
大学時代写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 2018年、アーリーエントリーしてNBA入りを狙うが、ガブリエルを指名したチームは無かった。同年のサマーリーグに参加し、サクラメント・キングスとの2年契約を勝ち取る。しかしながら、試合出場の機会は与えられず、2020年1月20日にトレードされてブレイザーズの一員となった。

サクラメント・キングス時代
サクラメント・キングス時代写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 「幼い頃から、毎日、とことん練習したよ。夢を実現するには、日々の努力の積み重ねと、自己を信じることが大事だと両親に教えられた。今、その言葉は正しかったと思う。練習するから自信に繋がるんだ。たとえ上手くいかない日があっても、夢を諦めないで進むことが大事じゃないかな。そうやってここまで来た」

 昨季、私のインタビューに応じた際、ガブリエルは自身の歩みをそう語り、「ブレイザーズと契約延長できるようにベストを尽くす」と言った。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 言葉通り、試合前に必死で基礎トレーニングを繰り返す彼の姿が印象的だった。

 現在、厳しい立場に置かれているガブリエルだが、壁を乗り越えられるだけのメンタルを持っているように見える。ウォーミングアップ時は、白い歯を見せながらペリカンズのメンバーとタッチを交わし、試合終了後は昨シーズンのチームメイトやスタッフたちと挨拶する様に、人柄が滲み出ていた。

昨シーズンの試合前に練習するガブリエル 撮影:著者
昨シーズンの試合前に練習するガブリエル 撮影:著者

 間もなく24歳となるガブリエルの今季6試合目はいつ訪れるか。この若者がスーダンの星となることを、心から願う。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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