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NBA復活を狙う32歳のアジア系ポイントガード

林壮一ノンフィクションライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今季、ゴールデンステイト・ウォーリアーズの傘下にあるGリーグ、サンタクルズと契約すると見られていたジェレミー・リン(32)だが、契約には至らなかった。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 1988年8月23日、アメリカ合衆国カリフォルニア州トーレンス生まれのリンは、台湾の血を引く。幼少期、兄、弟と共に通ったYMCAでバスケットボールの手解きを受けた。

 高校最終学年のシーズンに平均15.1得点、6.2リバウンド、7.1アシスト、5.0スティールの活躍を見せ、知る人ぞ知る存在となる。

 その後、名門ハーバード大学のエースとなるが、2010年のNBAドラフトではお呼びが掛からず。サマーリーグで自身をアピールし、ゴールデンステイト・ウォーリアーズとの契約に漕ぎ着ける。

 ルーキーイヤーは29試合に出場したが、NBAに定着することは叶わず、Dリーグ(現Gリーグ)行きを命じられた。

写真:ロイター/アフロ

 翌年、ケガ人を埋める形でニューヨーク・ニックスメンバーとなったリンは、2月4日のニュージャージー・ネッツ戦で大爆発。25得点、5リバウンド、7アシストを挙げ、オールスター選手であるカーメロ・アンソニーに「リンの出場時間を増やすべきだ」と言わせるほどのパフォーマンスを見せた。

写真:ロイター/アフロ

 同シーズンは35試合でプレーし、そのうちの25回はスタメンで起用された。コンスタントに結果を出し、191センチしかないアジア人でも、NBAで通用する姿を強烈に伝える。

 黄色い肌にまつわる差別発言も聞かれたが、リンの存在は社会現象となった。

写真:ロイター/アフロ

 その後、ケガに苦しみながら、ヒューストン・ロケッツ、ロサンジェルス・レイカーズ、シャーロット・ホーネッツ、ブルックリン・ネッツ、アトランタ・ホークス、トロント・ラプターズと渡り歩き、昨シーズンはNBAからは声が掛からず、中国のリーグでプレー。

昨シーズンは年俸300万ドルで北京首鋼籃球倶楽部の一員となった
昨シーズンは年俸300万ドルで北京首鋼籃球倶楽部の一員となった写真:ロイター/アフロ

 

 年俸300万ドルが用意されたものの、中国リーグは、決してリンを満足させるものではなかった。

 NBAに復帰するために、まずはGリーグで他を凌駕して虎視眈々とチャンスを窺うーーそんな青写真を描いてサンタクルズ・ウォーリアーズの練習に参加していたのだが……。

 果たしてリンはもう一度NBAのコートに立てるか。彼の動向を見守りたい。

 

 

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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