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シックスマンを受け入れたカーメロ・アンソニー?

林壮一ノンフィクションライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 浪人生活を経て、ポートランド・トレイルブレイザーズを復帰の場とした36歳のカーメロ・アンソニー。昨シーズンの11月からブレイザーズのユニフォームを纏って58試合に出場した。アンソニーは、チームの顔としてプレイオフ進出に大きく貢献した。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20200303-00165236/

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 そして、今季は年俸$162万564でブレイザーズと再契約を結んだ。その折、アンソニーは笑顔で語った。

 「そんなに難しい決断じゃなかったよ。昨シーズンから、ポートランドで続けたいと思っていたからさ」

写真:代表撮影/USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 しかし、18年目となる今シーズンの彼の役割はスターティングではないようだ。プレシーズンマッチを迎え、テリー・ストッツ監督が口にしたスターティングファイブにアンソニーの名は無かった。

 ストッツ監督は、デイミアン・リラード、C・J・マッカラム、デリク・ジョーンズ・ジュニア、ユスフ・ヌルキッチ、そしてロバート・コビントンらを先発させると話した。

 2013年に得点王となり、オールスターに10度出場したアンソニーの昨シーズンの働きぶりを見れば、同監督のアナウンスに耳を疑った者も少なくない。

 しかし、いかなるスター選手でも、監督の指示には従わねばならない。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 アンソニーは言う。

 「スターティングだろうが、ベンチスタートだろうが、チームの為に何が出来るかを考えて働く。それだけだよ。だから特に疑問は感じちゃいない。チームにとってベストの状態を築くことが大事だ。

 監督の采配は受け入れる。今シーズンもブレイザーズでプレーすることについては、デイミアンやC・Jと何度も話し合ったうえで決めた。このチームはアットホームな雰囲気だし、周囲が俺を物凄く敬ってくれる。スターティングじゃなくても、重要な選手だと言ってくれる。心から光栄に感じるし、誠実に役割を果たしたい」

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 昨シーズン出場した58試合で、アンソニーは全てスターティングとしてコートに立った。全盛期のパワーは失せたかもしれないが、平均得点は15.4、リバウンドは6.3を記録し、リラードがケガで欠場した間は精神的柱としてチームを支えた。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 2018年にヒューストン・ロケッツの一員となり、ベンチスタートを命じられたが10試合にしか姿を見せなかったアンソニー。スタメンでない状況が許せなかったからこそ、彼は浪人生活を余儀なくされた。

 アンソニーは当時を振り返る。

 「実はヒューストンでもベンチスタートを受け入れようとはした。でも、7~8試合が精いっぱいだったんだ……」

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 そんなアンソニーが「チーム内での自分の役目を話し合っていくよ。デイミアンやC・Jをスターティングから外すことは出来ないだろう。でも、俺はバランスを取れると思うんだ」と話すのだから、歳月を感じる。

 「正直なところ熟考したよ。俺の新たな挑戦なんだ。そんなに難しいことでもないって思える。プライドとかエゴに縛られてプレーするのはマイナスだよ。深呼吸して、前を見詰めていく。そして自分の仕事をきちんと成し遂げる」

 このベテラン選手は今季、何を見せるか。目が離せない。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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