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元世界ヘビー級チャンピオンが語った「タイソンのリング復帰」

林壮一ノンフィクションライター
エキシビションの結果はドローだった(提供:Joe Scarnici/USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 1984年3月9日にWBCヘビー級タイトル、1986年1月17日に同級WBAタイトルを獲得したティム・ウィザスプーン(62)。

 彼は当時のボクシング界で傑出した存在だったが、ファイトマネーのピンハネに泣かされた。その後、プロモーターだったドン・キングと法廷で闘い、自身の奴隷契約を社会に訴えた男として知られる。

 ウィザスプーンは44歳にして当時のIBF9位にランクされ、45歳まで現役を続けた。※ご興味のある方は拙著『マイノリティーの拳』(光文社電子書籍)をご覧ください。

 そのウィザスプーンにマイク・タイソンvs.ロイ・ジョーンズ・ジュニアについて聞いた。

撮影:著者
撮影:著者

 「マイク・タイソンもロイ・ジョーンズ・ジュニアも大好きな選手だ。ただ、やっぱりサイズが違うよ。1度WBAヘビー級王者になったとはいえ、ロイは本来のヘビー級じゃないだろう。

 輝かしいキャリアを積んだ選手ではあっても、パンチ力とか体つきは、タイソンとは比較にならない。エキシビションとはいえ、クリンチばかりしていたのは、タイソンの1発を警戒したからだろう。

 ジョーンズの軽いパンチじゃ、タイソンにダメージは与えられない。そういうもんさ。

 タイソンが戦うのであれば、レノックス・ルイスあたりの本物の最重量級を選ぶべきだった。プロモーターはさ、やっぱりタイソンを主役にしたいんだ。だから、絶対にタイソンが不利にならない相手を選んだように俺は思う。

 54歳vs.51歳でも、まぁあのくらいは動けるってことさ。62歳の俺にエキシビションのオファーがあればやるかもしれないぜ。一度体にしみ込んだ技術は腐らないし、俺のディフェンスは生きているからな(笑)」

 今回タイソンが1000万ドル、ジョーンズが300万ドルを稼いだと報じられ、PPVも120万件が購入したと言われるなか、「次は俺だ!」と感じ、エキシビション参加に名乗りを上げる元チャンピオンが出そうな気配である。既にイベンダー・ホリフィールドがその気になっている。

 ヘビー級冬の時代に注目を集めるのは、<マスターズ>か……。現役選手の奮起を待ちたい。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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