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200年に一人の天才ボクサーが語る「井上尚弥、凄過ぎたラスベガスでの勝利」

林壮一ノンフィクションライター
写真:山口裕朗

 現役時代、所属していた協栄ジム会長、故金平正紀に「具志堅用高を超える逸材。200年に1人の天才」と絶賛された元WBAジュニアウエルター級1位、日本同級&日本ウエルター級王者の亀田昭雄。

 本シリーズでお馴染みの彼が、ジェーソン・モロニーを7回2分59秒で沈めてWBA/IBFバンタム級タイトルの防衛に成功した井上尚弥について語った。

撮影:著者
撮影:著者

 井上尚弥は本当に凄い選手ですね。速いし、バランスがいい。あのバランスは圧巻ですよ。左ジャブでも、力を込めた右でも、大抵のボクサーは空振りしたら体が流れてしまう。強打して当たらなかった折には、特にバランスが崩れますよね。

 でも、井上にはそれが無いんです。空振りしてもバランスが崩れないから、直ぐに次のパンチが出せる。僕と戦ったアーロン・プライアーを彷彿させます。

 井上はパンチにスピードがありますよね。毎回毎回、あのハンドスピードには驚かされます。打ったら、直ぐにまた次が来るわけですから、相手は息つく暇もありません。

写真:山口裕朗
写真:山口裕朗

 本当に井上尚弥には言うことがありません。脱帽です。ジャブも、左フックからの攻撃も、左アッパーを腹から顎へというダブルも、カウンターも実に見事です。

 肩の力を抜いて、しっかり拳を握って打っているしね。日本ボクシング界に、彼と肩を並べられるレベルの選手なんて、昔も今もいませんよ。

 だからこそ井上は、バンタム級という軽いクラスながらラスベガスでメインイベンターとなれたのです。

 今回の対戦相手、モロニーもいい選手でした。でも、3ラウンドくらいで力の差を感じて、あまり攻めなくなりましたね。ボディが効いていたんでしょう。

 倒れないために、何とか粘るという戦い方に変えてしまいました。「当たればいいな」という感じでパンチを出していましたね。

写真:山口裕朗
写真:山口裕朗

 世界中を見渡しても、今の井上に勝てる選手って見当たらないですよ。今後、井上とグローブを合わせる選手たちは、モロニーのように途中で諦めて下がるだけ、逃げるだけになっていくケースが増えるでしょう。そこをどう仕留めるかが、課題となるでしょうね。下がるだけの相手を追うことって、難しいんですよ。

 パウンド・フォー・パウンドでもベストになるんじゃないかな。日本人でもここまでやれるんだ、という事を見せてほしいです。

 何度も言いますが、僕は現役時代、金平正紀会長に「200年に一人の天才ボクサー」なんてキャッチコピーを付けられました。が、井上尚弥こそ、その言葉が相応しい、200年に一人の逸材ですよ。彼を見ているとワクワクします。顔文字なら(^^)ですね(笑)

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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